〜pray〜

□〜第七章〜 疑惑は時に惨事を生む
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「真姫、本当にどうしたんでィ?いつもなら屯所に来るなり、すぐ見廻りに行きたがるじゃねェかィ。」


土方を撒いた総悟は、いつもの如く見廻りを早々にすっぽかすと、真姫と2人で行きつけの団子屋に腰を下ろしていた。

見廻り中も真姫はずっと下を向いて歩き、会話には応じるもののいつもと雰囲気が違う。
それは分かるが、その理由が分からない沖田はお手上げである。

真姫が外に出るのは、実はあの事件以来これが初めてだ。
あの時の真姫は後頭部にあった打撲痕から出血し、意識も曖昧だった状態で発見された。
おまけに、辺りには薬品のような異臭が漂っており、絶対安静ということでここ2、3日屯所に籠もりっぱなしだったため、見廻りが好きな真姫の為を思って珍しく自分が見廻りに行くと言ったのに、先ほどの拒否反応。




…絶対おかしい。




「何かあったかィ?」
「いえ、特に…!」


それが分かるのに、探りを入れる言葉もすぐにはぐらかされてしまえば、こちらも為す術もない。
一つため息をついて探るのを諦めた沖田は、そういえば…と口を開いた。


「今日からはまた旦那の迎えが来るンだろィ?良かったじゃねーかィ、久しぶりの我が家に帰れて。」


軽くそう言いながら団子を頬張る沖田は、まさかその「明日は遠足なの!」的なテンションの高さで夜眠れなくて、見廻りを嫌がったのだろうか?と言う思考が一瞬よぎった。
もしそうだとしたら、間違いなく土方に士道不覚悟で切腹させられるだろう。
いや、だがよくよく考えると真姫は武士ではないため、それには当てはまらないような気がした。
しかし、そういう自分たちだって武士なんていう格式高いものになった覚えはない、志が妙に一致したゴロツキの集団である。

巡回にも行かないで昼寝かサボりを日常としているお前が何言ってんだ。というツッコミは、自分の中では無かったことにする。


「…駄目ですか?」
「え?」
「帰らないと…駄目ですか?」


そう1人ツッコミをしていた沖田が、真姫の言葉の意図が分からなく思わず聞き返せば、そこには買ってやった御手洗団子に手も付けない真姫が、真剣に沖田を見つめていた。


「何でェ、旦那と喧嘩でもしたのかィ?」
「そういうわけじゃあ…ただ、今はお互い距離を置いた方がいい気がして…」


沖田の憶測に、どこかぎこちなく笑みを浮かべる真姫は、そのままスッと下を向く。
何もなくて家に帰りたくないという訳ないだろうと自己完結した沖田は、そうだねィ…と少し考えた。


「喧嘩したんなら、謝ンなせェ。旦那なら、きっと分かってくれまさァ。」
「だから喧嘩じゃ…!!」
「すみませぇん。」


真姫がガバッと顔を上げて反論しようとした瞬間、2人の目の前に現れた小さな女の子が声をかけてきた。



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