〜pray〜

□〜第一章〜 なんか起こるまえってたいてい静か。
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「か…神楽ちゃん!それなに!?」


新八が震える声でそういうと、神楽は「あ、落とし物ネ!」と、満面の笑みをたたえた。


「その笑みが怖い〜!!え、ってか、これ夢小説でしょ!?なに、このホラー的存在!ってか、前にも似たようなことあったよね!?」


完璧に理性を失った銀時は、ソファーから飛び降りると、神楽の肩を前後に揺する。


「神楽!お父さんはなぁ、神楽をこーゆー子に育てた覚えはありませんっ!」

「育ててもらってねーヨ。黙れ、白髪天パ糖尿オヤジ。」


銀時に揺らされているせいで幾分か頭を揺らしながらも饒舌に銀時を侮辱した神楽は、黙って見ている新八に人を掴んだままの左手を差し出した。


「新八ィ、どうにかするヨロシ」

「どうにかって…こんなに泥だらけだったら、まずお風呂だよね。」


そう言いながら、改めて神楽に握られている人を見る。

髪は、綺麗な漆黒。
肩か、それより長いくらいのストレート。
神楽が左手だけを掴んでいるので、右側がずり落ちて引きずられている服を見ると、ここではあまり見かけない上質な布で仕上がっている着物。
泥だらけでよく分からないが、きっと良い色合いだったのだろうと思う。


「ん?着物って事は、女の子?」


新八が、目線を泥だらけの人から神楽に向ける。


「何言ってるアル。当たり前ヨ。男だったら捨て置くネ。キモイ」


凹んで力が抜けた銀時から軽々と抜け出した神楽が、新八をあざ笑うように見下ろす。


「いやいやいや…じゃあ、お風呂入れるのは神楽ちゃんやってね。」

「分かってるヨ。お前なんかにやらせないネ!」

さっき、何とかしろって言ったよね?

そんな新八の言葉をシカトした神楽が、左手を引っ張りそのままの勢いで自分の方に動いた人を肩に担ぎ上げると、お風呂場の方まで歩いて行った。






さて、これからどうしよう…。

風呂場に行く神楽をリビングで見送った後、新八は、銀時の部屋に布団をひいた。
目が覚めるまで、ここに寝かしておいた方が良いと思ったのだ。
あ、泥だらけになってたし、怪我とかしてたら消毒もしなくちゃ。
布団を敷き終えた新八が、救急箱を取りに行こうとリビングに戻ると、そこにはうなだれた銀時が。


「ぱっつぁんよぉ…俺はそんなに年取ったか?」


どうやら、先ほど神楽に言われたことがショックの様。


「いや、神楽ちゃんも本気で言ったわけではないと思いますよ…多分。」

「お前、今多分って言ったろ?銀さんだってなぁ、天パでさえなかったら、今頃きれーなねーちゃんの一人や二人くらい…」


多分と言われたことが気に食わなかったのか、銀時ががばり、と顔を上げて新八に抗議をし始めた。


「あー、はいはい。そーですね。」

「何、今日のダメガネ。いつも以上に反抗期じゃない?」

「今忙しいんだから、銀さんも手伝ってくださいよ!あの人がお風呂から上がってきたら、消毒とかもしなくちゃいけないし…あ、着替えの服とかどうしよう…」


その呟きに一目散に反応した銀時は、目線を素早く風呂場に向けた。


「え、何?さっきの子風呂入ってんの?」

「さっき話してたでしょうが。」

「銀さんは、それどころじゃなかったんですぅー。荒れ狂う自分自身と戦ってたんですぅ。」


銀時がぷぅと頬を膨らませて、いわゆる「怒ってます」ポーズをしたが、新八には良い歳こいたオッサンがやっても無意味の様に思えた。


「ってかよぉ、風呂に入れるんだったらちゃんと俺の許可取れよな。」

「え、何か問題ありました?」


新八が首を傾げて聞く。


「言ってくれたら、俺が風呂に入れたのになぁ〜。と…」

「ダメに決まってんでしょーが!!何、セクハラする気!?」

「セクハラじゃねーよ、立派な少女保護だろーが。」


そこまで言った銀時が、ふと何かを思いついたような顔つきになり、それに気づいた新八が怪訝な顔をした時した。

その顔には憎たらしい程の満面の笑みが。






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