〜pray〜
□〜第二章〜 新しい環境にすぐ慣れる奴って、意外に神経図太いやつ。
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「真姫さん、何か食べれないものとかあります?」
スーパーのカゴを持った新八が、そう真姫に聞いてきた。
「あ、特にないですよ!…すみません。家賃払えてないのに、こんな事になっちゃって…」
申し訳なさそうに謝る真姫を見た新八は、いえいえと手を振る。
「人数多い方が楽しいですし、僕も嬉しいですよ!あ…それより、さっきは無理強いみたいな感じになってすみません。家とか大丈夫ですか?」
最初、新八が何を言っているのか分からなかった真姫だが、やがて、ああ。と納得したように手を打った。
「大丈夫です。本当はあたし、家ないんです。昨日追い出されちゃって…」
「…なんか、凄い複雑な環境にいるのに、思い出し方は古典的なんですね。」
「そーゆー昔の人が考えたことを今の人がやっていくことで、伝統は受け継がれていくんですよ。」
そう言って茶目っ気に笑う真姫を見ていた新八は、ふと思っていたにことを呟いてみた。
「真姫さんの目って、綺麗ですね。」
「…え?」
思わず聞き返して、新八を見ると、そこには顔を真っ赤にした新八が。
「やっ…別に、深い意味はないんですよっ!ただ、まっすぐな目っていうか、凄い綺麗な色だなって…あ、た、卵買わなくちゃ!どっちの方が良いですかね…?」
卵売場に一目散に走っていった新八を見て、しばらく目を丸くしていたが、やがてくすりと笑うと新八の後を追う。
真姫が新八の後ろに来たとき、新八は8個入った茶色い卵のパックと10個入った白い卵のパックを手に取り悩んでいた。
「うーん、残り少ないのこっちだから、こっちにしてみたらいいんじゃないかな?」
そう言って指を指したのは、10個入った白い卵のパック。
新八も、そうですね。と納得し、卵の棚から一番下にあるのを取り出す。
「あたしは嫌いなんだ。この目が。」
そう小さく新八の耳元で真姫が呟いた。
それに反応して、新八が驚いたように真姫を見上げる。
「それって「真姫ー、新八ィ、ちょっと来てヨ!」
新八が口を開いたとき、お菓子売場にいる神楽の声とかぶり、その言葉は真姫には届かなかった。
「なーにー?」
「酢昆布が安いアル!真姫、買ってヨ!」
神楽の声に反応した真姫が神楽の方に行ってしまったので、新八はその真意を問うことは出来なかった。
「ふぅ!いっぱい買ったアルな!」
「いや、これほとんどが神楽ちゃんのお腹の中に入るものだからね?」
真姫たちが大量の荷物を持って、スーパーから出てきた。
一人二つずつ紙袋を抱えている上、持てない物は定春の背中に乗せてビニールテープで結んでいるので、先ほどすれ違った可愛いおばあちゃんはこちらを凝視しすぎて財布を落としたほどだ。
それは真姫がちゃんと拾ったが。
「あたし、こんなに買い物したの久しぶりかも…」
思わず呟いた真姫の言葉に、新八が乾いた笑いで返した。
「そりゃあ、一人暮らしだったらこんなに要りませんよね。」
そこまで言って、ふと新八が何かを考える仕草をする。
「久しぶり…?と言うことは、真姫さん、どこかで働いてたんですか?」
その時、真姫の瞳が波紋を描くかのようにブレたのだが、そのとき丁度信号が変わってしまい、新八が信号機のボタンを押すために荷物を持ち替えた時だったので、気づかなかった。
「そりゃあ、あたしだってお金ぐらい稼がないと、この世界では生きていけないですからね。」
新八が、顔を向けたときには真姫の瞳にはいつもの輝きが戻っていた。
「そうですよね「キャーッ!!通り魔よぉ!」
新八の安心した笑顔に重なるように黄色い悲鳴が飛び交った。
それにいち早く反応したのは少し先で定春とじゃれつきながら歩いていた神楽。
「本当アル!しかも、刺されたの、さっき真姫が財布拾ってあげたおばーちゃんアルよ!」
「「え!?」」
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