飛べない翼
□あいつ
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あいつとそんな風に関わるようになって、時が過ぎた
あいつは相変わらず馬鹿で、会うたびに悪気のない失礼なことをいってくる
やっぱり俺が脅したことなんか覚えてねえんじゃねーか
そう思いながらあいつとの時を過ごしていた
ある休暇中に、俺はあいつを探していた。壁外調査を控えていて、やつに立体起動装置の調子をみてほしいとおもったからだ
あいつは「リヴァイ兵長のなら休暇でも夜中でもいつでも整備しますっ」とかいっていたので、遠慮なく使わせてもらおうと思った
リヴァイ「……おい、メガチビどこいったか知ってるか?休暇中に」
「リヴァイ兵長!!メガチビなら、故郷はないので本部のどこかにいるかと……庭にいることが多いですよ」
リヴァイ「……わかった」
あいつはこのころにはもうメガチビと呼ばれるようになっていた
部下の情報をあてに庭をさがしまわるとあいつは木の下でガキみたいにすやすやねてやがる
リヴァイ「……おい……」
ひとみ「……、なさ…ぃ……」
涙を流して何かをつぶやいている
巨人に追われる夢でもみてんのか
リヴァイ「…………」
ひとみ「……ごめん……なさぃ……」
謝るこいつをみて驚いた
手にはぎゅっと何かを握りしめていて、そっと手をとってそれをとると、お守りのような袋で、俺はその中身を見て更に驚いた
それは立体起動装置のほんの一部だった
いくつもの立体起動装置をてきたなか、何故かこのパーツは覚えてる
あの日
こいつのせいで死んだ俺の部下のものだった
ひとみ「ごめんなさい……ごめ…なさ……」
ずっと忘れていると思っていた
だがそれでもいいと最近思いかけてる自分がいた
こいつは今皆んなの役に立っているし
部下はもう死んだ。死んだものは死んだのだ。それは変えられない
死んでしまった部下と、今のこいつの命をひきかえにはできない
今大切にすべきなのは、死んでしまった部下ではなく、こいつなのだ
と感じていたからだ
でもこいつはちゃんと覚えていた
きっと今でもその十字架を背負っているのだろう。それがどれだけ辛いことか、俺にはわかるからこいつの痛みがわかる
泣きながら謝り続けるこいつの頭をなでてやって、涙を流す目に手のひらをかざしてやった
ひとみ「…っ?……へい…ちょぉ……、?」
リヴァイ「……おきたか」
ひとみ「ぅ……あれ……ここどこ…でしたっけ……」
リヴァイ「庭だ。ここまできたのはてめーだぞ」
ひとみ「ぁ……そうでした……あれ、でもなんでリヴァイ兵長が……?点検ですか?何かありました?」
リヴァイ「……ああ、明日から壁外調査だ。お前に立体起動装置をみてもらおうとおもった」
ひとみ「……明日からですか⁉それは急がないと」
リヴァイ「いや、いい。もうしばらく寝ろ」
ひとみ「ぁぅ……」
飛び起きるあいつの頭を押さえつけて寝かせる