飛べない翼

□フォミクリー2
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ユキコ「ここのクリームあんみつ、すっごく美味しくない?」

デイダラ「………」

ユキコ「……デイダラ??」

デイダラ「……ん?」

ユキコ「…ん?じゃなくて、、美味しくない??」

デイダラ「……あぁ、、美味いな、うん」

ユキコ「………」


最近見つけたお気に入りのお店にデイダラと2人でやってきたユキコ

「この前助けてくれたお礼がしたいから」という名目でこうして2人ででかけているが、ユキコにとって、これはデイダラとの久しぶりのデートだと楽しみにしていた

デイダラがひとみとの関係を断ち切って、里を選んでくれたことが本当に嬉しく

最近何もかもが上手くいっていると思っていたのに

なんだか、あれからデイダラの様子はおかしいままだった

今日もクリームあんみつを一口たべてから、ぼーっと窓の外をみてあまり人の話を聞いていない



ユキコ「……何考えてるの?」

デイダラ「……ん?別に」

ユキコ「…せっかく人がご馳走してあげてんだから、ちゃんと味わってよね?」

デイダラ「……へーへー、、美味い美味い」

ユキコ「こら、、」


面倒くさそうにする空返事に、一喝いれてやった


ユキコ「……ねぇ、デイダラさ」

デイダラ「…ぁ?」

ユキコ「……ひとみちゃんのこと、…忘れられないの?」

デイダラ「………」


デイダラなユキコの質問に黙ってから、クリームあんみつを口に運ぶ



デイダラ「……それはないな、うん」

ユキコ「……そっか」

デイダラ「………それがどうかしたか?」

ユキコ「……あのさ」

デイダラ「………」

ユキコ「……だったら…私と付き合ってよ…」

デイダラ「………」

ユキコ「……私は…デイダラのこと…まだ好き」

デイダラ「………」

ユキコ「……デイダラも…私のこと…大切に想ってくれてるでしょ…?」

デイダラ「………」

ユキコ「……私は…デイダラに見合う女だと思うよ…?それなりに強いし…」

デイダラ「………」


ユキコの言葉に、デイダラがじっとユキコをみつめる


ユキコ「…ちょっと、なんか言ってよ…しんどいんだけど…」

デイダラ「………わかった」

ユキコ「……何が??」

デイダラ「ぁ?付き合うんだろ?わかったよ、うん」

ユキコ「ほ、本当にっ…?」

デイダラ「……オイラと付き合っても何も楽しくないと思うが」

ユキコ「そんなことない!!」







その日の夜、私たちは久しぶりに結ばれた

でも身体を重ねて、ようやく分かったことがある

デイダラの心は、もうここにはないのだということ

その行為に、何の愛情も感じられなかった





それから数ヶ月しても、デイダラの様子が変わることはなかった

最初のうちは、なんだかんだで前の恋人に未練があるのだろうと思っていたが

時が解決する、なんてことはなく

デイダラはいつまでたっても空っぽだった



そんな様子に気付いていたのはもちろん私だけじゃない

クロツチたちや隊員たち、そして土影様すらもデイダラの様子を気にかけていた






クロツチ「オイ、デイダラ兄。暇だからお得意の芸術語りでも聞いてやるよ」

デイダラ「………」

クロツチ「オイ無視すんな!くだらない粘土ばかりつくりやがって!!」

ユキコ「ちょ、く、クロツチ…」

アカツチ「デイダラ兄がキレるだに…!!」


クロツチの煽りに、デイダラがぴくりと反応してから、ゆっくりこちらを振り返る


デイダラ「…そうかもな。オレの芸術は…くだらねぇもんばっかだ…」



クロツチ「え…」

ユキコ「デ、デイダラ…??」

アカツチ「…壊れちゃったダニか…?」


そのまま怒りもせずスタスタとあるいていくデイダラに、クロツチや周りにいた隊員がいよいよやばいんじゃないかと大騒ぎした






ユキコ「デイダラっ…」

デイダラ「…あ?」

ユキコ「……ねぇ、、本当に大丈夫?」

デイダラ「……何がだ、うん」

ユキコ「…………変だから」

デイダラ「……オレは至って普通だぞ」

ユキコ「……私…なんか…不安なの」

デイダラ「………」

ユキコ「……今のデイダラ、…里を抜けた時のデイダラに似てると言うか…」

デイダラ「………」

ユキコ「……このまま、…どっかに居なくなっちゃうんじゃないかって、不安で」

デイダラ「……安心しろ。里を抜けたりしないからよ」

ユキコ「……本当に?」

デイダラ「…ったりめーだろ、うん」

ユキコ「……なら、…よかっ」

デイダラ「アイツを捨ててまで、選んだんだからな…」

ユキコ「っ……」


デイダラは小声で呟き、スタスタと歩いていった

その瞬間、私はようやく気がついた

どんなに私ががんばろうと、元気付けようと、私の力では、私が大好きなデイダラを取り戻すことはできないと























デイダラ「あーー……なんもうかばねぇ…うん」



ここ数ヶ月、全く良い作品が思い浮かばない

これがスランプってやつだろうか

作業部屋での手を止め、気分転換にやってきたのは岩隠れの里唯一の青の花が咲く丘だった

蒼く咲き誇る花々にかこまれ、寝転がって青い空を見上げた

目を閉じて次の作品のフォルムを想像するも、頭に思い浮かぶのは最後に目にしたひとみの顔だった

ポロポロと涙を流しながら、それでも笑顔だった


ひとみ『デイダラ、楽しいこと…たくさん教えてくれてありがとう。』


あの時の顔が、言葉が、声が、数ヶ月たった今でも忘れられない

守りたかった。自由にしてやりたかった。
もっともっと、楽しいことはいっぱいあるって、教えてやりたかった。

それでも、里の仲間を傷つけたアイツを許すわけにはいかなかったし、これ以上里を危険に晒すわけにはいかなかった



デイダラ「………くそ…」



ひとみに別れを告げてから、全く芸術を感じなくなって、何も楽しくなくなった

任務もつまらない、何のために里を守ってるのかもわからない

オレの心は、里を抜けたあの時と、同じ状態にありつつあった









デイダラ「…ん?何してんだ?お前ら」

クロツチ「…!デイダラ兄!やっと帰ってきたか!」

ユキコ「…デイダラ、、」

デイダラ「人のうちの前で待ち伏せかよ、、」

クロツチ「デイダラ兄!!これから宴会だ!」

デイダラ「…は??宴会だぁ?」

クロツチ「皆んな来てっから、早く行くぞ!」

デイダラ「知らねぇよ。オイラは行かねーぞ、うん」


デイダラがそう部屋に入ろうとした瞬間、アカツチがデイダラを持ち上げた


デイダラ「てめっ、何にすんだ!!!」

アカツチ「皆んなが待ってるから行くダニ」

デイダラ「関係ねーだろ離せ!!!」

クロツチ「往生際悪いぞー?デイダラ兄」

デイダラ「…にすんだよ!!オイユキコ!お前もぐるか!?」

ユキコ「笑、諦めてよ、デイダラ」

デイダラ「くっそ!!!」



デイダラはアカツチに担がれたまま強制的に宴会時へと連れ込まれた

そこに着くと、デイダラの小隊の隊員たちや、その他岩隠れの忍たちが集まっていて、デイダラを拍手でむかえる

奥には土影まで座っていた


デイダラ「な…なんだ…こりゃ!?」

クロツチ「じゃあお前ら!いっせいのーせ!!!」


「「「デイダラ!!誕生日おめでとう!!!!」」」



クロツチの合図で、皆んなが口を揃えて一斉に唱えると、同時にパンパンっとクラッカーが弾けた

デイダラは急な展開に、ぱちぱち、と瞬きをする



クロツチ「まー座れって!兄」

デイダラ「な…なんだよ…これ」

アカツチ「まだわからないダニ?」

クロツチ「デイダラ兄、今日は5月5日、デイダラ兄の誕生日じゃねーか!」

デイダラ「………」


誕生日

確かに今日はデイダラの誕生日だった

今みで身近な者に祝ってもらったことはあるものの、こうして里のみんなから盛大に祝われたのは初めてなので、急なサプライズに驚きを隠せない


デイダラ「…な、何で…お前らが」

クロツチ「皆んなでお祝いしようぜって、計画してたんだ!な?ユキコ姉」

ユキコ「…まあね、、」

デイダラ「……ユキコ…」

クロツチ「ほら飲め飲め!今日は全部、ジジイの奢りだからよ!」
















デイダラがようやく酒を飲んで本調子を取り戻してきたところで、クロツチが立ち上がった


クロツチ「じゃ、そろそろ、里のみんなからデイダラ兄へプレゼントを贈呈するぜ!!」

デイダラ「お前ら…んなもんまで用意してやがったのか、うん、」

クロツチ「代表して、アタイとユキコ姉から贈呈するぜ!」


「立てって!デイダラ!」「隊長ー!!!」と周りの隊員がデイダラを立たせると、クロツチとユキコがデイダラの前に立つ


クロツチ「じゃ、アタイの方からは…じゃーん!!里1番の高級旅館「玄炎」の2泊3日、スペシャルスパ&しゃぶしゃぶコース!2人1組ご招待券だ!!」

デイダラ「こ…これは…!!五影接待ランクの超高級旅館じゃねえか…!!!うん!?」

クロツチ「どうだ兄!なかなか気が効くプレゼントだろ」

デイダラ「1番下の部屋でも1泊数十万するだろ…よくこんなの手配できたな、うん」

クロツチ「ま!ほぼジジイの力だけどな」





ユキコ「私からは、これ…」

デイダラ「……ん??」


デイダラがユキコから手渡された封筒を手に取ると、中には「デイダラ10日間特別有給」と書かれていた



デイダラ「な…なんだよ…これ?」

ユキコ「…皆んなに協力してもらって、デイダラに明日から10日間特別有給休暇を取ってもらうことにしたの」

デイダラ「…は?オイラは隊長だぞ?そんな休暇をとるわけには…」

ユキコ「だから、、皆んなに協力してもらったんだって!デイダラに拒否権ないから」

デイダラ「はぁ!?何でだよ!?だいたい、10日間も休みもらったって、オイラには何も…」

ユキコ「……あるでしょーが、、やらなきゃいけないこと…」

デイダラ「……は…??」

クロツチ「……兄、、察しろよ、ユキコ姉の女心を」

デイダラ「………」

ユキコ「……デイダラ、…私たち里の忍は…ここ数年で、随分デイダラに助けられてきた。皆んな、デイダラのことを信頼してる」

デイダラ「………」

ユキコ「……だから、…アナタに偽った人生を歩んでほしくない。アナタのしたいようにしてほしい」

デイダラ「………」

ユキコ「……ここ最近のデイダラは、…私たちが好きなデイダラじゃないよ。デイダラは…デイダラが信じる道を歩んでほしい」

デイダラ「………」

ユキコ「……10日もあったら、迎えに行けるんでしょ??…早く行ってきな」

デイダラ「……ユキコ…」


ユキコの言葉に、デイダラがじっとユキコをみつめた


デイダラ「……だが…お前は…」

ユキコ「…わたし、今のデイダラに全然魅力感じないし…正直うざい。何言っても聞いてないし、…こっちから願い下げだから…だから」

デイダラ「………」

ユキコ「……しょうがないから、…一旦別れてあげる。ま、男らしいデイダラが戻ってきたら、またアピールさせてもらうけど」

デイダラ「……ユキコ…」

ユキコ「……ほら、…受け取って」

デイダラ「………」






デイダラ「だが……アイツは…里の住民に…お前に…気概を加えた。そう簡単に、許すわけには」

オオノキ「デイダラよ
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