飛べない翼

□SF後
1ページ/4ページ





シトとの激戦を終え、ようやく平和な日々を取り戻しつつある機関

まだまだミュットの片付けが残ってはいるものの、以前よりもスタッフの休暇も増え、激務度は改善されはじめている

クロードが休日前の夜勤を終え、部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、向かいからひとみがのんびり歩いてくる


クロード「!ひとみ、おつかれさま」

ひとみ「…クロード!」

ひとみはクロードが話しかけるとニコニコした


クロード「ひとみも、今日お休みだよね?どこか行くの?」

ひとみ「ぅん、お墓参り」

ひとみはそうニコニコする

そういえば、もう少しでゲイルの命日だ


クロード「ゲイルのか…、、」

ひとみ「ぅん、あとみんなの」

クロード「そっかそっか、朝早くから偉いな、ひとみは」

ひとみ「んーん、そんなことない」

クロード「笑、、…良かったら、俺も一緒に行っても良いかな…?」

ひとみ「…!!」

クロード「ゲイルにも会いたいし…」

ひとみ「ぅん!一緒にいく!」

クロード「良かった!今準備するから、ラウンジで待っててよ」

ひとみ「ぅん、」



ひとみとラウンジで待ち合わせをして、急いで部屋に戻りでかける支度をした

思えばひとみと2人ででかけるのは初めてだ。そう思うとちょっと緊張する気もする

ひとみはそうでもないみたいで、クロードが来るとニコニコした

お墓に向かう途中はたわいのない話をして、




お墓に付くと、ひとみが慣れたように掃除をはじめる

きっとしょっちゅう来ているのだと、クロードは改めてひとみの優しさに目を向けた

掃除をして、花を添えてから、2人で手を合わせて目を瞑る

ゲイルはクロードにとって大切な先輩だった

操縦士として選ばれ機関に入った最初の頃は、何でもゲイルが面倒をみてくれていた







クロード「…??」

クロードが目を開けると、隣ではまだひとみが手を合わせて目をつむっている

普段は全く口に出したりはしないが、ひとみはゲイルのことで常に罪の意識を背負っていると、以前プルタークが口にしていた

ひとみが心優しくなったのも、ゲイルの死を経験したからこそなのだと

だからこうして、忘れることなく、毎月毎月お墓参りにきているのだと



クロード「……」

ひとみ「…??クロード?」

クロード「…あ、ごめん、、行く?」

ひとみ「ぅん。次はプルタークのとこ」

クロード「あ!」


ひとみは掃除用のバケツを持ってスタスタとプルタークの墓に向かい、また掃除をはじめた

クロードもすぐにそれを手伝い、また2人で手を合わせて祈りをささげる

プルタークのお参りを終えたものの、まだバケツに1束花束が残っていた


クロード「…ひとみ、これ余ってるけど」

ひとみ「次あっち」

クロード「え!!?ど、どこいくの!?」


ひとみが離れた区域の墓まで向かうので、クロードも不思議に思いながらそれについていった


クロード「…!ここ…ガーラのお墓か…」

ひとみ「……」

ひとみは何も言わずにニコリとしてから、ガーラの墓の掃除をしはじめた

ガーラはクロードの同期の操縦士で、同期の中でも群を抜いて操縦士の素質を持つ最強のエースだった

ひとみとガーラは接点がなかったはず…
(確か葬儀の日も機関に残って昼寝をしていた…)

それなのにどうして……

そう首を傾げながらも、ひとみの隣で同士であるガーラに祈りをささげる



クロード「…ひとみ、ガーラと顔見知りなんだっけ?」

ひとみ「…?んーん、知らない」

クロード「……じゃあ…何で…」

ひとみ「……替わりにお祈りするの」

クロード「…替わり??」

ひとみ「…ぅん」

クロード「……!!」


確かひとみは、シトの一軍だった男と深い関わりを持っていて、一時期そのことで機関の上層部がひとみの処分について揉めていたことがあった

結局その男自身もシトを抜け、多くの機関の人間を守ったことで罪を免除されている

そいつのことは、クロードもよく覚えていた
いつか仇を打ってやろうと思っていたからだ

そう

ガーラを簡単に潰した男、デイダラを



クロードがそのことを思い返していると、ひとみが眉を下げてクロードをみつめた

ひとみ「……ごめんなさい…」

クロード「…!ひとみ……」

ひとみ「……わたしが」

クロード「………」

ひとみ「……わたしが…替わりに祈るから…デイダラの分も…」

クロード「………」

ひとみ「……プルタークがいたら、きっとそうしろって言ってる」

クロード「……そうだな、、、」

ひとみ「………」

クロード「……俺も祈るよ。また一緒に来よう」

ひとみ「っ…クロード…」









クロード「で、ひとみはこのあとどうするんだ?機関に戻る?」

ひとみ「んーん、、私は…探さないと」

クロード「探すって、、…あ、、デイダラのこと?」

ひとみ「ぅん、、」

クロード「……まだ会えてなかったんだね、、戦闘を終えてから、どこかに消えたとは聞いてたけど、」

ひとみ「………ぅん…」

ひとみがわかりやすくズーン、、と落ち込む


クロード「でも、、どこを探すの?何か手がかりとかあるの?」

ひとみ「んーん、何もない。わたし…デイダラのこと、何も知らないから」

クロード「そう…なんだ…」

ひとみ「…でも、…生きてることだけはわかるんだ」

クロード「………」























エリオット「っんーー!!!良い天気だな〜、、」


警備の休憩時間に、屋上にでて思い切り身体を伸ばす

最近は戦闘も減って、身体を動かす時間もあまりないので、身体が鈍ってきているのがよくわかる

平和ボケってやつだな…

そんなことを考えながら街の景色を眺めると、見覚えのある白い鳥があたりを飛んでいた


エリオット「あれ…?」


鳥を目で追うと、鳥はこちらへと羽ばたいてきて、機関の天辺に生えるアンテナへと止まった


エリオット「…!!やっぱり!久しぶりだね!」


エリオットが鳥が止まるアンテナに目を向けると、そこにはデイダラが腰を下ろしていた



デイダラ「よぉ。…世の中すっかり平和ボケしたな、、うん」

エリオット「はは笑、僕も今そう思ってたとこだよ」

デイダラ「こう平和ボケしてたら、お前らの仕事も減っちまうんじゃねーのか?」

エリオット「まあね、、でも、まだまだミュットの回収に追われてるよ笑」

デイダラ「ミュットは不滅だからな、そう簡単に全回収はできないだろ」

エリオット「てこずってるよ、大分ね…」


サッ、とデイダラがアンテナから飛び降り、エリオットの隣にやってきて街を見下ろす



エリオット「……ひとみ、アナタのこと…ずっと探し回ってますよ」

デイダラ「…そうか、、」

エリオット「…そろそろ会ってあげたら良いんじゃないですか?」

デイダラ「……色々肩がついたらな。うん」

エリオット「……??」

デイダラ「……しばらくは故郷に戻って、やらなきゃいけないことがある、…うん」

エリオット「…やっぱり故郷があるんだね、デイダラにも」

デイダラ「は??あたりまえだろ…」

エリオット「いや、、…生まれた場所はあっても、戻ったりはしないだろうと思ってたから」

デイダラ「……そうだな。…戻る予定なんか、1ミリもなかったな、…うん」

エリオット「……じゃあ…なんで?」

デイダラ「……放浪生活ってのも、そう楽じゃねーからよ、、それに、ある程度の地位を築いてねーと…」

エリオット「………」

デイダラ「………」

デイダラはそこまで言うと、言葉を詰まらせる


デイダラ「………フォミクリーってのは、、そういう奴じゃないと、扱えないだろ。うん」

エリオット「っ…!」

デイダラ「…あんまアイツのこと、…そういう風に言いたくねーが…」

エリオット「…デイダラ、、案外色々考えてるんだね、先のこと」

デイダラ「…ぁあ??」

エリオット「…いや、意外だなーと思って笑」

デイダラ「………」

エリオット「…ひとみのこと、そこまで考えてくれて嬉しいよ。」

デイダラ「……チ、うるせぇ」

エリオット「あ、口悪い…」

デイダラ「……じゃあオイラは行く。アイツのこと、頼んだぞ」

エリオット「うん!…気が向いたら、会いに行ってあげてねー!」


バサバサと飛び立つデイダラにエリオットがそう叫ぶと、
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ