飛べない翼

□SF
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「おつかれー」とトレーニングルームをあとに、戦闘部隊のフォミクリーがぞろぞろと歩く




エリオット「ひとみもこの後オフでしょ?」

ひとみ「うん」

エリオット「イズミたちと食事してからショッピング行くけど、ひとみもどう?」

ひとみ「わ、私はいい!」

エリオット「え!珍しい!…あ、もしかして指揮官とデート?」

ひとみ「ち、ちがう!」

エリオット「そしたら、またクロエとどっか行くの?」


それに対してもひとみがぶんぶんと首を横に振る


ひとみ「よ、用事があるから…じゃあ」

エリオット「あ、いってらっしゃい!」


ひとみがエリオットについてこず、ハンターともクロエとも過ごさないなんて珍しいと

エリオットはそう思いながら走るひとみの背中を見守った
















ひとみは自室にもどり、防御用のスーツを脱いで、先日クロエに見繕ってもらった浴衣に着替えていた

クロエに着方を習ったものの、中々着こなすのが難しく、何度も何度もやり直した

ようやく気にならない程度にうまくいき、鏡をみて髪を整える

昔と違って髪は短いので、セットするのは大分楽だ
それに、今の髪型は個人的にかなり気に入っていた

「可愛い」と言われたあの言葉を思い出してポッと顔を赤くする

これまたクロエに選んでもらった巾着を手に、意を決して部屋から飛び出た




誰にも会いませんように…




そう念じながら早足で廊下を進み、出口の方まで向かうと、「ひとみ?」と声をかけられ、ビクッと身体を跳ねさせる

恐る恐る振り返ると、そこにはぽかんとするクロードの姿があった


ひとみ「く、クロード…」

クロード「やっぱり…どうしたのそんな格好して」

ひとみ「こ、これは…クロエに教えてもらった…!」

クロード「浴衣…?あー今日お祭りがあるんだっけ?行ってくるの?」

ひとみ「っ…」

ぶんぶん、、と頭を一生懸命たてにふるひとみをみて、クロードがくすっと笑った


クロード「そっか、…あ、でも今日、指揮官夜勤だよね?」

ひとみ「…??うん」

クロード「指揮官と行くわけじゃないんだ。…内緒で誰かとデート?笑」

ひとみ「っ、ち、ち、ちがうっ」

クロード「笑、、そっかそっか。気を付けて行ってきてね」

ひとみ「うん!…クロードは」

クロード「ん?」

ひとみ「…クロードは、レイとデートする?」

クロード「ぇっ、、」


ひとみが期待の目でキラキラとクロードの応えを待った


クロード「…笑、、するよ。今日も一緒にご飯行こうか、って」

ひとみ「…!!!そうなんだ…」

クロード「ひとみと一緒だね笑」

ひとみ「ぅん…、、、…!!?ち、ちがう!!!」

クロード「笑、、」

わかりやすいひとみに、苦笑いするクロード



















お祭りがやっている神社の前で、ひとみが空を見上げながら待っていた

ここのお祭りは相当人気らしく、人混みも時間を増すごとに増えていく

会えるかな…

そう思いながら周りをきょろきょろとすると、ぐいっと腕をひかれる



ひとみ「っ…!」

彼かと思い振り返ると、目の前にはひょっとこ顔があり、思わずキョトン、、と固まってしまった

ひとみ「…???」

ひょっとこお面の後ろに見える綺麗な金髪に、心が膨れあがるのがわかる


デイダラ「おせーよ」

ひとみ「っ…デイダラ」

デイダラ「待ちくたびれたぞ、うん」


どこかの屋台で手に入れたであろう面を外して、デイダラはそれをひとみの顔にくっつけた


ひとみ「ごめん…」

デイダラ「…その顔で言われるとあんま説得力ねーな、、うん、」



「まぁ良い、行くぞ」とデイダラがひとみの腕を引っ張って歩き出した



混雑する中で、デイダラとひとみが並んで歩く

普段は敵対しているはずの2人は、こうしてお忍びでプライベートで会えることは滅多にない

ひとみは今日という日を楽しみに楽しみにしてきたのだが

だが楽しみにしていたあまり、いざ2人になると緊張してしまう

ひょっとこがあって良かった、、、

と面をつけたまま俯くと、デイダラがよこからぐぃっとひとみの頬を引っ張った


ひとみ「いひゃ…」

デイダラ「何ボーっとしてんだ、うん」

ひとみ「ぼーっとしてたかな…」

デイダラ「お前は普段からその調子なんだな、、うん、、」

ひとみ「ぅ…」

デイダラ「…てかいつまでそれしてんだよ、、」


「そろそろ外せ」と自分でつけたくせに、デイダラがひとみの顔からひょっとこ面を外した

素顔になったひとみが「かぁ、、、」と顔を赤くして俯く

そんなひとみを見て、デイダラがなんとなく緊張しているひとみを察し、手を引っ張った


ひとみ「っ…???////」

デイダラ「これ勝負しようぜ!うん」

ひとみ「……!!」


目の前には射的の屋台があり、デイダラが金を払って射的を構える

プスっと打った先の缶が微妙に動いたが、壁ギリギリのとこで止まった


ひとみ「わぁ、、」

デイダラ「ん、次お前な、うん」

ひとみ「おぉ…」

デイダラに射的銃を渡され、そのずっしりとした重さにたじろぐ

ひとみ「…意外に重い…」

デイダラ「…そうか??」

ひとみ「…こ、こう?」

デイダラ「お前射的もやったことねーのか」


「仕方ねーな、、」とデイダラがひとみに射的銃の持ち方をレクチャーする
デイダラがさりげなくひとみの腰に触れて「もう少しこっち」と立ち位置を動かす

デイダラ「ん。で、丸から除け、うん」

ひとみ「ぅん。…わっ」

ぷすっと玉が飛んだが、全く思ったように飛ばず(むしろ何故かとなりの的まで玉が飛んでいき、、)デイダラがぷはっと笑った


デイダラ「下手くそ笑」

ひとみ「ぅー、、、なんで、、丸から見たのに、、」

デイダラ「ちゃんと構えてねーからだろ、うん」

ひとみ「ム、、、」

デイダラ「じゃあこれ負けた方がビール奢りな、うん」

ひとみ「ぇえ!!?」


デイダラが意地悪そうにニヤッと言うと、ひとみがギョッとした

明らかに負けが確定しているのに…

意義を申し立てようにも、隣でデイダラが射的銃を構え早速的に玉を当てはじめているので、ひとみも焦ってまた射的銃を構えた

結果、あたりまえだがひとみの惨敗

むしろひとみが飛ばした玉がデイダラの的に命中し得点を与えてしまうという最弱な状況で、その度にデイダラがゲラゲラ笑った


ひとみ「全然ダメだった…」

デイダラ「お前戦闘でも銃は使わない方が良いな、、うん」

「味方を殺し兼ねないからな、、」とデイダラが笑うので、ひとみがまた落ち込んだ

デイダラのおかげでようやくひとみの緊張も解け始め、2人はお堂を目指しながらも、そこら中の屋台を見て回った

途中で綿飴を買って食べたり、ヨーヨー救いをしたりして、今までにないわくわくに緊張していたひとみも終始笑顔だった

そろそろお参りにいくかと、2人でお堂に並び、お参りを済ませる


ひとみ「デイダラはどんなお祈りしたの?」

デイダラ「世界征服だ、うん」

ひとみ「……それってお祈りなの?」

デイダラ「うるせーな。一生平和な人生なんてのは、オイラには刺激が足りなすぎるからな」

ひとみ「…ふーん、、」

デイダラ「…お前は?世界平和でも祈ったのか?」

ひとみ「……そんな感じ」

デイダラ「ケッ、つまんねー祈りだな、これだから機関のやつは、、」


デイダラがそう呆れる中、ひとみはそれを聞き流した

本当は世界平和なんかではなく、ただ

デイダラと、大切な人たちと、ずっと過ごしたい。今みたいに。

そう願ったのだった











ひとみ「…???デイダラ…??」


ふと気づくと、デイダラがいなくなっていた

いつの間にはぐれたんだろう

そう思い近くをきょろきょろするものの、デイダラの姿は見当たらない

もしかしたら帰ったのかもしれない

いや、でもまだビールも奢ってないし、、、

そんなことを思いながら、デイダラを探しつつ、屋台の間をうろうろする


ひとみ「……!」


綺麗な簪の屋台が目に入り、じっとそれを眺める

ひとみ「……綺麗…」

そっと手をのばし、簪と一緒にならぶ小さな髪飾りに触れる

それに見惚れていると、そっと肩を叩かれて、デイダラかと思い笑顔で振り返ると、そこにいたのは見知らぬ男たちだった


ひとみ「っ…???」

「お嬢さん、1人で来てるの?」

ひとみ「ぇ、…ち、ちがう…」

「へぇ〜、連れはどこにいるんだ?」

「1人ならお兄さんたちと遊ぼうよ」

「可愛いね、これほしいなら買ってあげるよ」


柄の悪い連中にぐいっと、腕をひっぱられる
蹴りを入れてやりたいとこだが、こんなところで騒ぎを起こすわけにいかない
それに思ったより人数がいるし、腕を引っ張る男の腕が強く、みしっと腕の骨に圧がかかった



ひとみ「痛っ…」

「良いから来いって」


そう引っ張られた瞬間、パシッと男の腕が振り払われた



デイダラ「…触んな、うん」

ひとみ「…デイダラ」

「…なんだ、彼氏持ちかよ」










ひとみ「デイダラ、一般人だからダメだよ本当にっ」

デイダラ「うるせぇっ。そんなの知ったこっちゃねーよ、うん」


デイダラが確実に切れていて、男の足元にカサカサと土粘土の蜘蛛がうごめいているのがみえた

ひとみはそれを確認すると、いよいよやばいと察知し、必死にデイダラをなだめる

が、デイダラは完全にキレ、ひとみの話に耳も貸さずに、そっと目の前で印をかざす


ひとみ「っ…デイダラ!」

デイダラ「喝っ!」


デイダラがそう唱えるので、ひとみがギュッと目を閉じた

が、いつまでも爆音が聞こえてこないので、そっとひとみが目を開けると、爆発は起きていなかった


デイダラ「なんつってな笑」

ひとみ「……デイダラ…」

デイダラが振り返ってそう笑うので、ひとみがそっと胸を撫で下ろすと、次の瞬間男たちが一気にデイダラに襲いかかる

もちろんデイダラはそれを軽く交わし、男たちに拳を喰らわした


「てめぇ…」

デイダラ「男なら拳だな、うん」


4対1でデイダラと男たちが一気に殴り合いを始める

デイダラは優勢ではあるものの、技は使わないようにしているため、




2人の音がデイダラを抑え、もう2人がデイダラの顔を殴ると、手を出さないようにしていたひとみの沸点が一気にあがり、ついついいつもの勢いでチャクラを込めた拳で男を殴り飛ばした

男は思い切り飛ばされ、打ちつけられた壁がボコっと凹む

フー、、フー、、と威嚇するひとみに、他の男たちもギョッとしてデイダラをなぐるのをピタリとやめた


デイダラ「お前の方がアウトだろ、、うん」

ひとみ「ハ…!や、やっちゃった…!」


気付いた時には男たちが逃げ出し、辺りから「警察よんだぞー!」と聞こえてくり


デイダラ「やべ、逃げるぞ、ひとみ」

ひとみ「え…!」


デイダラがひとみの腕をひっぱり、
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