リヴァイと大人になる

□止まった思考
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最近ひとみを許して、前みたいに、いや前より頻繁にメールだのであいつと連絡をとりあうようになって、学生時代の頃に戻ったような感覚だ


あいつと話すのはやはりおちつく


忙しい仕事の終わりでも、あいつのわかりやすく嬉しそうな声をきくと仕事の悩みが馬鹿馬鹿しくなるし、なんだか明日も頑張るかと身が引き締まった


そんなやつの誕生日はすぐ目前にせまっていて


あのいざこざがあってから会っていなかったこともあって、どっか飯でも連れてってやるかと思い予定をとりつけた


その予定をなにがなんでも遂行するために仕事を前日までにすべて片付けた


俺があまりにいつもよりテキパキ仕事をするので、同期のナミが「最近どうしたの?」と勘付いてきた



リヴァイ「……悪いが金曜は残業できない。その分今やるからお前らには迷惑かけないが」

ナミ「金曜なんかあるのー?リヴァイくんが予定死守するなんて珍しい」

リヴァイ「……うるせえよ。いいから手を動かせ頭を回せ」

ナミ「……あ、わかったー彼女さんだ」

リヴァイ「…………」

ナミ「あ図星だー」

リヴァイ「ちがう。うるさいから無視しているだけだ」

ナミ「えー絶対そうでしょーなに?記念日とか?」

リヴァイ「そんなもんねえよ」

ナミ「記念日ないってなによ笑 あ、じゃあ誕生日?」

リヴァイ「…………」

ナミ「……リヴァイくんって案外わかりやすいね」


そろそろこのお喋り女をころしたい

そのあともナミは俺が無視しようと「プレゼントなにあげるのー?」「彼女つぎいくつだっけ?18?」だのくそうるさかった


そんなやつがうるさいとなりで俺はちゃくちゃくと仕事を片付けていった



ひとみは俺を気遣って毎日「大丈夫ですか?無理ならもっと後でも平気です」「先輩無理しないでください…」と連絡をしてきたが、俺は「今回は大丈夫だ」と返すと嬉しそうにしていた


大丈夫。といった手前俺も今更ドタキャンするわけにいかない


なんとしてでも金曜はあける


という思いで仕事を片付けたら、やるべきことはひとみの誕生日である金曜日までにすべて片付いた





しかし当日になって上手くいかないもんだ





ナミのやつが仕事をミスりやがった





それは日が落ちかけて、ビル窓にオレンジの光が反射しているころだった




ナミは珍しく隣のデスクで泣きながらなんとか続きをやろうとパソコンを起動させてる




俺とナミは上司のエルヴィンから呼び出されて、ナミだけでは無理だし、俺がやるのが一番早いから一緒に残業するようにいわれた


ナミは「あ、でもリヴァイさんは…その…」と俺を見る


俺はエルヴィンに「…了解だ」とだけつげてオフィスからでて自分のデスクにむかう




ナミ「ご、ごめんねリヴァイくんっ、大事な用事あるんだしいいよ残業は…他の人に頼んでみ」

リヴァイ「いいからてめーはさっさと続きをやれ。早く終わらせるぞ」

ナミ「……ごめん……」


ナミはしぶしぶデスクにむかう


リヴァイ「……気にするな、俺の彼女はそんなちっちゃいやつじゃない。連絡すればわかってくれる」

ナミ「……ごめんね……彼女さんにも…謝っておいて」



それはしない

ひとみは最近までやたらとナミを気にしていたから、言ったらややこしくなりそうだ



リヴァイ「……できれば提示までに片付ければいい話だ。さっさとやるぞ」

ナミ「うん……ありがとう…リヴァイくん……」



しばらく奮闘したが、どうやら定時までには終わりそうもない


時計をみるともうすこしでひとみが先に仕事をあがる時間だ



俺は一度部屋を出てひとみに電話をかける。出て行く際にナミがちらちらこっちをみてきた。自分のせいで予定がなくなるのをきにしてるのだろう



リヴァイ「ひとみか、悪い同期が仕事でミスった……俺が一緒に残業して片付けなきゃいけなくなった」

ひとみ「…………そうですか、、仕方ないですよ!気にしないでください」

リヴァイ「……今回は大丈夫とかいっておいてすまん。埋め合わせは必ずする」

ひとみ「大丈夫です大丈夫です、本当にきにしないでください」

リヴァイ「……悪いな」

ひとみ「いいんです…残業…がんばってください先輩…」



予想通りあいつはききわけがよかった


俺は電話をきってデスクにもどり、作業をつづける

それにしてもよくこんな複雑なミスしたもんだ



ナミ「リヴァイくん」

リヴァイ「……なんだ」

ナミ「……彼女さん怒ってた?」

リヴァイ「……さっきも言ったがこんなことで怒るようなやつじゃない。いいから作業続けろ馬鹿」

ナミ「……了解」


結局作業は少しの延長でおわらず、めどがたったころには21時を回っていた



もう少しで終わるから一息いれるか、と二人で飲み物をかって喫煙室にむかう



ナミは入社したころは喫煙者じゃなかったのにいつのまにか仲間入りしていた
周りの仲間が喫煙者が多いからだろう




ナミ「でも終わりそうで良かった。リヴァイくんほんとにありがとね」

リヴァイ「……ああ」

ナミ「……今度なんかおごるね。暇な日ない?」

リヴァイ「……礼はいい。」

ナミ「でも悪いよー。。彼女さんとの予定もドタキャンにしちゃったし」

リヴァイ「……まあミスくらい誰にでもあるだろ」

ナミ「……リヴァイくんって実は結構優しいよね」


あいつはそういって俺に笑いかける




なんだか妙な気がして、「さっさと終わらすか」と早めに喫煙室をでて作業にもどる


終わったのは22時過ぎで、二人で会社を後にし、電車にのる


俺とナミの最寄駅は同じだ


そこからあいつはバスにのるが、不運にもバスはもう終わっていて「でも歩けるっちゃ歩けるから」とあいつは言い出し、二人で歩き出した



0時までもうあまり時間がない



さっき電話した時に、ひとみに「誕生日おめでとう」というつもりだったのに忘れていて、俺はそのことが気になり早く電話しなおしたいとおもう

がナミも女なので、この時間に一人で帰らせるわけにはいかなかった



リヴァイ「……お前んちこっちであってるのか」

ナミ「うん!たしかこっちー」

リヴァイ「……適当だな」

ナミ「……彼女さんどうだった?」

リヴァイ「……ち、うるせえな。どうもねえよ」

ナミ「……羨ましいなー彼女さん、リヴァイくんに大事にされてて」

リヴァイ「………お前は彼氏とどうなった」

ナミ「……どうもなってないかな、、実はもう別れようかなって思ってて」

リヴァイ「……ほう」

ナミ「………私……好きな人できたっぽいんだよね」



なんかわからないが、


嫌な予感がした



リヴァイ「……お前んちここから何分かかる。やはりタクシーでかえれ」

ナミ「……えーもうちょっと二人で歩こうよ」

リヴァイ「……もう夜遅い。俺はおまえんちまで歩いて送るほどお人好しじゃない」

ナミ「じゃあリヴァイくんち泊まる」

リヴァイ「……は?」

ナミ「……泊めて…くれない……?」

リヴァイ「…………」



嫌な予感はどんどん近づく



こいつには彼氏がいるが、彼氏とはマンネリでうまくいってない



そんな時に俺の家へ泊まりたがってるとなれば理由は一つだ




リヴァイ「……やはりタクシー疲労か。駅まで戻るぞ」

ナミ「待って……」




あいつが俺の腕を掴む




ナミ「……私……リヴァイくんのことが好きになっちゃった」

リヴァイ「…………」

ナミ「……彼氏とは別れる。だから……振り向いて欲しい」

リヴァイ「…………」

ナミ「……他の同期の女の子と比べて…私を特別扱いしてくれてるのわかってるから……期待しちゃう」

リヴァイ「…………」

ナミ「……今の彼女じゃ…リヴァイくんには合わないよ。私なら合わせられる。プライベートも、仕事も、全部リヴァイくんについてく」

リヴァイ「…………」

ナミ「……お願い…私を見て……」



そういってナミは次の瞬間俺にキスする



思考が一時停止した



それは俺が



こいつに対して100%気持ちがないと言ったら嘘になるからかわからない







ナミは美人だし、好みのタイプだった。それに今日のことも抜かせば仕事もできるし、ドライな感じも俺に合う


最近ひとみとごたごたがあって

正直わかってくれるこいつに気持ちが傾きかけるときもあった

会社ではこいつとカップルだのなんだの言われていることも、慣れてしまっている自分がいた



だからなのか



ナミにキスされた瞬間




思考が一時停止して、避けることができなかった




だがキスされて、必死に思考を起動した瞬間に頭に浮かんだのはひとみのことだった





俺はやっとナミを押して話す





しっかり目を見て、はっきり断ろうと口を開きかけた瞬間だった







ドサッとビニールがおちる音がして、そっちみればそこにいたのは、紛れもなくひとみの姿で





あいつの目からは涙がボロボロこぼれていた






しまった



と思った瞬間にあいつはいつものごとく全力疾走でその場を逃げ出した

ひとみは一度逃したら中々捕まらない

それをわかっていたから俺も全力で追いかける


周りが明るくなって、タクシーが見えた瞬間、やばいとおもって足を早めるが、あいつはそれを悟って持っていた箱を投げつけてきた



それをキャッチすると、その隙にやつはするりとタクシーに乗り込み逃げていった



こうなるとやっかいだ



その場で何度も着信をかけるが、もちろん切られる




キャッチした箱からずるっ、と生クリームの塊が落ちた




ケーキだ




あいつが誕生日だったことを




一瞬でも忘れてしまっていた
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