課長がすきです
□大好きな人
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ひとみ「ん……ふぁ………先輩…?」
目がさめると気持ちの良いベッド
ここは私が大好きな人の部屋
隣に寝てたはずのその人はいなくて、ぽっかり空間があいてる
毛布をかぶったまま首をあげてベランダのほうをみると
彼がタバコを吸っているのが見えた。すーっと空気に溶けていく白い煙が綺麗だ
いつもついつい彼のタバコをすう姿にみとれてしまう
ガラス越しに目があうと、彼は地面にタバコをすりつけ、吸い殻を持って部屋にはいってきた
ひとみ「先輩…おはようございます」
リヴァイ「……ああ。今朝ははやいな」
ひとみ「ふぇ?……あ、ほんとだまだ7時…だからねむいんだ…」
リヴァイ「てめーはいつでも眠そうだろうが」
先輩はそういうとわたしのほうえきてぺちんと軽く頬を叩く
ひとみ「はにゃ……ねむねむです……」
リヴァイ「ならねてろ」
ひとみ「やです。せっかく先輩といるのに…」
リヴァイ「……とかいって目が閉じてるぞ」
ひとみ「ハッ!あぶない…」
私の大好きな人
それは会社の上司のリヴァイ先輩
先輩はうちの会社の営業部のエースで、今年課長に就任した
本当はもっと前から就任依頼がきてたのに面倒だから断っていたらしい
私が先輩と出会ったのは去年の5月
配属表がでるまえに、同期から横浜支店の営業部でリヴァイさんの管轄になったら地獄。という噂をきいていて、配属表をみた時には落胆した……
わたしの担当はリヴァイ先輩で、わたしは憂鬱な気分で初めての横浜支社にむかった。あのときの胃の痛みときたら病院にいくか悩むレベルだった
私は初めてリヴァイ先輩に会ったとき、先輩のあまりの若さとイケメンさと小柄さから案内係の下っ端だと思った
先輩とオフィスで一体一ではなして、わたしが「ぁの…リヴァイさんはいつおこしになられるんですか?」という馬鹿な質問をぶつけて、先輩が「……は…?」といったのを覚えてる
「俺がリヴァイだ」という彼に対して「うそぉ⁉」と叫ぶのをこらえるのは大変だった
先輩ははじめ冷たくて、無愛想でつきあいにくかった
なにいっても、馬鹿、だの、阿保、だのいわれ、時には容赦なくでこぴんしてきたり、頭を小突いてきたりした
馬鹿でのろまなわたしに対して「もはやてめーがどうやってうちの会社に入ったか気になるから調べてきていいか」と本気で馬鹿にしていた
かっこいいけど怖いしやなかんじだな、とおもってた
リヴァイ先輩はそのころからむちゃくちゃもててたけど、それがなんでなのかよくわからなかった
そんなリヴァイ先輩に毎日毎日私はしかられ、一度、わからないのに怖くて聞けなくて、無理やり案件をすすめた時にミスって、先輩に尋常じゃなく怒鳴られた
その日は午前中にミスをしたので、昼休みをぬかして午後も泣きながらなんとかミスを修正した
少しだけ残業をしてから、デスクで縮こまり落ち込んだ。自分の使えなさとバカさに呆れて、仕事むいてないのかな、もうやりたくないな、なんておもっていると、リヴァイ先輩が「お前この後あいてるか」と話しかけてきた
まさか退勤後も説教されるのか、、
と思いびくびくしながら先輩についていくと、先輩は居酒屋で「好きなものを頼め」とごちそうしてくれた
話も今日の説教ではなく、「まあ1年目なんてそんなもんだ」とか「失敗してもフォローするから失敗から吸収すればいい」とかいって励ましてくれた
その日だけでなく、私が落ち込んでいると大人数の飲みでも私の隣に来てくれたり、残業中にジュースをかってくれたりした
わたしは先輩を意識するようになった
よくよく先輩を目で追ったり、先輩と一緒にいると先輩は優しくて気遣いができて部下想い
そりゃあもてるわ……と思う面ばかりだった
リヴァイ先輩は私の同期にも人気があり(あまり喋ったことないけどペトラちゃんとか)、他の代の人からももてた。リヴァイ先輩より上のひとが先輩をすきなケースもあった
先輩は告白されるときいつも「お前は大事な部下だが、それ以上でもそれ以下でもない」というような断り方をしていた
私もそんな先輩の部下の一人で
叶わぬ恋だということはわかりきっていた。実際わたしは先輩にその後、一度振られている
先輩と過ごすうち、夏頃にある事件がおきて、私は急に人事部への移動を余儀なくされた
もう前みたいに毎日先輩に挨拶したり、叱られたり、励まされたり、それが無くなると思うと辛くなって
私は飲み会の席で先輩の前でわーわー泣いた。先輩に「同じ支社なんだからどうせ顔あわせるだろ…」とあきれられたが、それとは違うのだ。わたしはずっと先輩の直属の部下でいたかった
私があまりにどうしようもないので、先輩は名刺にプライベート用携帯の番号やLINEのidを書いてくれて
「部署はかわるが、これからもお前が部下なことは変わらない。なにかあったら連絡しろ」
と言ってくれた
私の気持ちは一瞬晴れた
が、実際人事部にはいると先輩と顔をあわせることはなくなった
それに、やはり横浜支社は営業部をトップとしているので、たとえ人事でも営業部にへこへこしなければならず、先輩をはるかかなたに感じた
人事部に入ってすぐに仕事を任された
新卒に一番近かったわたしは、就活生をひきつける説明会だったり、ネットのページの更新だったりをまかされた
人事部の繁忙期に移動したため毎日毎日忙しくて、正直営業部にいたころより忙しくなって、先輩のことを追いかける余裕も少しなくなっていた
たまに食堂でスピードでご飯を食べてると、営業部の女性社員と先輩が資料をみて話し合いながらランチしているのをみかけて、私がこんなことしているうちに先輩はどんどん遠くにいって、誰かのものになってしまうんじゃないかとおもう
そんな気持ちと忙しい仕事で気持ちはいっぱいいっぱい、定時になっても明日遠征にいく大学での説明会の資料ができてなくてデスクで頭をかかえる
営業部の頃みたいに、みじかで支えてくれる先輩がいなくてせっぱつまったときはほんとにつらい
そう思いためいきをついて、パソコンにじっと近い距離で文字を打ってるとポスんっと頭に重みを感じた
ひとみ「っ先輩?」
リヴァイ「……そんな近くでみてたら目悪くすると何度も言っただろ」
ひとみ「ぁ、すみません、癖でつい」
リヴァイ「……文字読めないならメガネでも買え」
先輩はそういうとわたしの隣のデスクの椅子を引いて座る
先輩がきてくれた。嬉しすぎて顔がにやけそうだ
ひとみ「先輩、休憩ですか?」
リヴァイ「あぁ。あと馬鹿に修正依頼をだしにきた」
ひとみ「ふぇ?馬鹿?」
リヴァイ「お前だ馬鹿。これ」
ひとみ「??」
先輩がわたしに差し出したのは私が書いた就活サイトの会社紹介ページを印刷したもの
リヴァイ「……ここ、業績数字が一昨年のになってる」
ひとみ「……え⁉うそ⁉ぎゃーほんとだっ」
先輩にみせられたプリントをみてから、自分の資料を確認すると確かに一昨年のを書いている
リヴァイ「あとここも」
ひとみ「……はぁ…くぅぅ」
わたしはすぐにサイトの編集ページをひらき、しょんぼりする
リヴァイ「……まあお前にしてはよくやってるじゃねえか、説明会は知らんが」
ひとみ「……それ絶対知ってますよね泣」
私の毎度毎度の説明会の失敗は気付けば支社で有名になっていた
中でも支社で開催した説明会はエルヴィン部長にも参加してもらったりして、その時に緊張でエルヴィン部長の名前を忘れちゃったり(エルヴィン部長が「忘れられたか笑」とフォローしてくれて助かった
間違えてパワーポイントを閉じてしまって大画面に私のパソコンのピカチュウの壁紙が映し出されたりして散々だった
リヴァイ「よく知らねーがホーム画面の壁紙は変えておけ。ピカチュウじゃ威厳もなにもなくなるじゃねえか」
ひとみ「やっぱり知ってるんじゃないですか泣」