ただ課長のそばにいる
□犬
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俺はたまに、会社内をうろうろする犬の世話をしてやっている
そいつの名前はひとみで、いつも尻尾を振りながら俺の後ろをついてくる
それは去年からで、こいつと別々の課になって課長になった今でも、こいつは時間をつくっては俺に餌をもらいにやってくる
多分ここまで部下の面倒をみてやったことはないと思う
ちなみに、プライベートの連絡先を教えた部下もひとみが初めてだった
今日もあいつは残業してる俺の元に現れる
「お前あんま残業すんなよ」というと、「退勤はもうしたんで大丈夫です」とばっちり帰る格好でただただ書類を片付ける俺の隣に座る
最初のうちはこの行動が意味わからなすぎてやばかった
俺のことを好きなのはわかっているが、振った後もこうしてやってくるやつは初めてだ
振ってからしばらくは、「期待はやめろ」「俺は上司としてお前を可愛がってるだけだ」「早く新しいやつ探せ」とさとしたが、ひとみは「先輩にはもう何も期待してないです!ただそばにいるだけです」という
本当にもう答えは求めていないようで、ひとみはいつも、俺がひとみを好きじゃない、というていで接してくる
ただひとみがしたいようにしてるだけ
だから俺もそこまでとやかくいわない
ひとみ的にも、そのうち新しい人が現れるから、あまり俺に余計なことをいわれたくないらしい
リヴァイ「……よく飽きねえな、毎日」
ひとみ「暇なんですよ」
リヴァイ「ともだちと飯行ったりしないのか」
ひとみ「…たまーに。わたし寂しい人なんで」
リヴァイ「…友達いねーのか」
ひとみ「……そんなしょっちゅうあったりしかいかもです。友達みんな販売とかなんで」
リヴァイ「…そうか」
ひとみ「あ……お邪魔でしたら帰ります…」
リヴァイ「…………いや、別に邪魔ではない」
ひとみ「……良かったですっ…」
リヴァイ「……ひとみ、少し休んで帰るか。茶淹れてこい」
ひとみ「あ!はぃ!お紅茶ですね!」
俺が頼むとぱたぱた茶をいれにむかった
あいつは本当に犬みたいで、俺が餌をやって育てたぶん、あいつは俺に忠実なのだ
ひとみ「はい、おいしいアップルティーですよー」
リヴァイ「……おいしいかどうかは俺が決める」
ひとみ「……どうですか…?」
リヴァイ「……悪くない」
ひとみ「ふふ…よかったです……」
最初のうちはこいつをこんな風に扱うのはよくないとおもった
前は部下として、こいつとこうして一緒にいたが、こいつが俺に想いを告げてからしばらくはこいつを突き放した
変にかまってやって、こいつが期待でもしたら、それはこいつのためにはならないから
でもこいつはそれでも
ひとみ「先輩なんなんですかっ!なんで避けるんですかやめてください悲しいですっ!私を振ったこときにしてるんですか!そんなのやめてください!」
とぎゃーぎゃー騒いだ……
おかげで俺がひとみを振ったという事実はあっというまに横浜支社中に知れ渡った
ハンジが「ひとみが気にするなっていってるし今までのままでいいんじゃない?」といってきて
まあ確かに、俺としても落ち着いたらあいつとの関係を元に戻そうと思っていたので
ひとみを無理に突き放すのはやめて、こうして一緒にいる
リヴァイ「……そろそろ帰るか。」
ひとみ「はぃっ…駐車場までお送りしますッ」
ひとみはいつも俺の後をついてきて、わざわざ駐車場まで俺を見送りに来る
後ろを振り返ると「?」という顔で俺を見てくる。謎だらけなのはこっちのほうだ
ひとみ「それでは先輩、また明日ですっ」
リヴァイ「……ああ、いいのか?ここで」
ひとみ「……?はい!じゃあ私はいきますね」
ひとみは二人きりの時、絶対俺の車に乗らない
あまりに時間が遅すぎて俺が無理やりのせるときは仕方なく後部座席なな乗り小さくなってる
自分でいうのもなんだが、普通だったら俺のことを好いてる女は、俺に送ってくといわれたら喜んで助手席に乗るんじゃないかと思う
でもひとみは乗らない
こいつが助手席に乗らなくなったのも、俺がこいつのことを振ってからだ
一緒に営業してたころはいつもひとみが隣に座っていたし、図々しく家まで乗せてくれとかいっていた
だけど今になってあいつがそうしないのは
あいつが俺との一線をちゃんと守ってるからだ
だから俺も、ひとみと一緒にいることができる。そこらへんひとみは本当に信用できるやつだ