きめ

□生存if
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杏寿郎とひとみは、まだ階級が低い若かりし頃に任務先で出会った

鬼に追い回されながら逃げ回るひとみを、杏寿郎が間一髪で鬼の首を切り落とし助けたのが2人の出会いだ

ひとみは鬼の血鬼術にかかり、声を出せなくなったしまっており、ふたりはしばらく行動を共にすることになった














ーーー





ひとみ「ぇっ…もう甲に??」

煉獄「うむ!先日の任務で階級があがったんだ」

ひとみ「は…はやい、、この前手紙で乙になったばかりだったのに…」

煉獄「要がどんどん任務をくれるからな笑、最近は中々煉獄家にも帰れなかったんだ」

ひとみ「そっか…、、せっかくの休暇だったのに、私と会っていて大丈夫…??」

煉獄「ん…??それはお互い様だろう!ひとみの近況も聞きたかったしな!会うのは久々だろう」

ひとみ「…う、うん…そうだね、、」


杏寿郎の言葉に、ひとみは少し俯いてお茶を啜った

およそ1年ぶりに会った杏寿郎とひとみだが、久々に目の前でみる杏寿郎は、1年前に比べると体格も大きくなり、風格もでていた

甲、というと柱の一個下の階級にあたるので、きっと他の隊士たちから、頼りがいのある上官として慕われているだろう

一方ひとみは、杏寿郎と出会ったころの階級からさほど変わらず、庚のままだった

あまりの差に自分が不甲斐なくなり、カラスづてに手紙を読むたびに、ひとみは自分の階級を隠すようになった



煉獄「それで、最近はどうだ??元気にしていたか??」

ひとみ「ぁ…ぅ、うん…!!元気…だった…」

煉獄「そうか!中々任務で一緒になることがないから、心配していたんだ」

ひとみ「…小さい任務をちまちまこなしていたから…、、」

煉獄「それは偉いな!かんしんかんしん!」

ひとみ「……、、、」

煉獄「……??どうかしたのか」

ひとみ「……んーん、、何でもない」

煉獄「……ひとみ」

ひとみ「……??」

煉獄「…笑、、ひとみはよく頑張っていると思うぞ」

ひとみ「っ…、、、」


杏寿郎に優しく微笑まれて、胸がズキンと痛むのを感じた

手紙で連絡を取るに連れて、ひとみがあまり自分の話をしようとしないのを、杏寿郎も感じとっていたのだ




ひとみ「……わたしは全然…まだだめだよ…」

煉獄「…!!何故だ?立派に任務をこなしているではないか」

ひとみ「…そうだけど、、」

煉獄「……」

ひとみ「……杏寿郎はすごい。こんなに早く階級も上がるし、たくさんの人の命を助けて、、」

煉獄「……」

ひとみ「……私は…杏寿郎みたいにはなれない…」

煉獄「……」


杏寿郎は静かにひとみの話を聞くと、ははは…といつものように軽快に笑った


ひとみ「……??」

煉獄「笑、、ひとみは俺になりたかったのか??」

ひとみ「……ぇ??」

煉獄「違うだろう。1人でも多くの人の命を助けて、人の役に立ちたいと言っていたはずだ」

ひとみ「……そうだけど…」

煉獄「人の役に立つのに、俺のようになる必要はない。ひとみはひとみのペースで、やるべきことを果たせば良いと思うぞ」

ひとみ「……杏寿郎…」

煉獄「…笑、頑張れひとみ!!俺は応援しているぞ!!」


いつものように杏寿郎が笑顔で、ぽむち…!とひとみの肩を叩くので、ひとみも杏寿郎の顔を見てからふわりと笑う


ひとみ「…そうだよね、頑張る…!!」

煉獄「うむ!その調子だ!」

ひとみ「…杏寿郎、」

煉獄「ん??」

ひとみ「…わたしもずっと杏寿郎を応援してる!…立派な柱になってね」

煉獄「…ありがとう笑、、約束しよう!」


2人でニコリと笑い合うと、「この話はこれでしまいだな!」と杏寿郎が





ーーー




それからしばらくして、鎹ガラスづてに、杏寿郎からひとみに手紙が届いた

杏寿郎がついに炎柱になったという内容に、ひとみは嬉しくもあり、複雑な気持ちになった

炎柱になったら、きっと今までのような関係ではいられない、それをなんとなく予感していたのだ




ーーー







煉獄「それでは、皆持ち場に着くように!!」


久々に招集された大規模な任務

この任務でな炎柱になった杏寿郎が指揮を取っており、ひとみは杏寿郎としばらくぶりに再開した

炎が描かれた炎柱の羽織は、よく杏寿郎の話からも聞いていたもので、杏寿郎の背中によく似合っていた

すっかり炎柱が板についた杏寿郎に少し緊張しながら指示された持ち場に向かおうとすると、杏寿郎と目が合う



煉獄「久しぶりに同じ任務だな!!ひとみ!!」

ひとみ「ぁ…ぅ、うんッ…」

煉獄「先日「丁」になったと聞いたぞ!すごいじゃないか、頼りにしている!」

ひとみ「ぅ、うん…、、」


いつものように、前と変わりなく声をかけてくれる杏寿郎に嬉しくなり、ひとみはペチペチ、と両頬を叩いて気合いを入れた

杏寿郎に成長したところを見せないと…!!!

そう思ったせいか、その日の任務は体に力が入り思ったように動けなかった

ミスを連発して周りの仲間にフォローしてもらい、「ふがいない…」そう思えば思うほど身体が重たくなる



「煉獄さん!!鬼はあっちにむかいました!どうしますか!」

煉獄「住民の避難が優先だ!皆は協力して街へ!」

「ハイッ!!」

煉獄「俺は鬼を狩る、甘露寺、援護を頼む」

甘露寺「はいっ…!!」



怒涛が飛び交う中、杏寿郎の大きな背中が目に入った

会うたびに遠くに行ってしまう背中をみつめると、杏寿郎が振り返ってこちらに目を向けた


煉獄「ひとみ」

ひとみ「っ…」

煉獄「任務中だぞ、気を抜くな!!!君は丁だろう!」

ひとみ「は、はいっ…、きょ…!」



思い切り叱られて、びくりと体を振るわせる



ひとみ「れ…煉獄さん…!」

煉獄「……??」


もう杏寿郎は、あの日の杏寿郎ではない

関係性もすっかり変わった、もう友人ではいられない

自分は一般隊士で、彼は皆んなが憧れ、尊敬する柱

名前を呼ぶなんてとんでもない

前々から思っていた迷いに口を開けば、自然に出たのは、今まで呼び続けていた杏寿郎の名前ではなく、炎柱としての彼の名前だった

杏寿郎はひとみに呼ばれると、ぴたりと足を止めて振り返り、少し驚いた顔をした




ひとみ「っ…す、すみません、気合いを入れ直します」

煉獄「……うむ、
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