きめ
□罪転生
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宇髄「お疲れー。先上がるわー」
煉獄「………」
宇髄「……おーい」
煉獄「………」
宇髄「……おーい煉獄」
煉獄「………」
宇髄「……おい煉獄」
煉獄「む……??」
煉獄がぼーーー、、、とデスクトップを見たまま動かないので、向かいから宇髄が雑誌を使って頭をぽすりと叩くと、ようやく反応をしめした
煉獄「…何だろうか!!」
宇髄「何だろうかじゃねーわ。お先にって言ってるんだよ、、、」
煉獄「あぁ!すまん!お疲れ!!」
宇髄「…お前大丈夫かよ、、さっきから全然動いてねーけど、、」
煉獄「む…!!?もうこんな時間か!?」
「時が経つのは早いな!」と笑う煉獄に、宇髄がため息をついた
宇髄「…まだへこんでんのか??弟子と別れたこと」
煉獄「………」
宇髄「……前世の記憶に耐えられないやつもいる。…仕方ねぇよ」
煉獄「…うむ。わかっている」
「わかっている」と言いつつ、また腕を組んでどこかをじっと見たまま動かない煉獄に、宇髄がやれやれ、、、と
ーーー
前世の記憶を思い出したのは、大人になってからだった
大学を卒業して新任教員になりたてだった俺は、急に当時の記憶を思い出した
輪廻転生というのは不思議なもので、記憶を取り戻した頃には、職場仲間には元柱たちが勢揃いで、高校時代に剣道の指導をしていた後輩も、昔ながらの弟子である甘露寺だとわかった
高校時代からずっと仲が良かった宇髄は、大学時代から記憶が戻っていたらしく、俺に隠しながら生活を送るのは大変だったとのことだ
前世の記憶に戸惑いもしたが、それ以上に、またこうして皆んなと平和な世の中で巡り会えたことがうれしく、毎日が幸せだった
だが、俺の中で気がかりなことがあった
周りには前世から繋がりがある者ばかりだというのに、そこにひとみの姿が現れないことだった
かつての愛弟子であり、不幸な最後を遂げさせてしまった彼女に、俺はどうしても会いたかった
会って謝りたかった、昔のことを
最初の頃は、こんなに巡り合わせがあるのだから、そのうち会えるだろう
と漠然とした期待を抱いていたが、彼女は一向に現れない
入学者の合否が決まれば、必ず学生リストから彼女の名前を探し
インターネットやSNSでも彼女の名前を探したが、どうしても見つけることができなかった
俺が彼女を探していることに、1番身近にいた宇髄がすぐに勘づいて一緒に探すのを手伝ってくれたが、それでも彼女はみつからない
そのうち、高校に竈門少年たちや、他の前世からの繋がりがある者たちが入学して、再会を果たす中
俺は少しずつ、彼女との再会を諦め始めていた
彼女はこの世に産まれていない可能性がある
それをなんとなく予感していたからだ
それは彼女が、前の生で自害してしまったこと
己で己の命をたったものに、神様は新しい命をあたえなかったのかもしれない
なんとなくそう思った
それから数年…
宇髄「…なぁ煉獄、お前さ、前に喋れない弟子を探してたよな?あれもうやめたのか?」
煉獄「ん??……うむ笑、、」
宇髄「なんで?」
煉獄「…探したところで見つけるのは難しいだろう。それに、縁があれば神様がきっと会わせてくれると思った。だからすくなくとも、自分からは探すのをやめた」
宇髄「へぇ〜。お前は何であいつに会いたかったんだ??」
煉獄「………」
宇髄「……ん??」
煉獄「…謝りたい…ずっとそう思っていたが、、それは違うかもしれないな…、、」
宇髄「………」
煉獄「…理由はない。とにかく会いたかった。会って、色んな話をしたかった。皆んなが鬼を倒したことも教えてやりたいし、…楽しいこと、幸せなことをもっと…、前にできなかった分、話をしたかった」
宇髄「……そうか」
煉獄「…うむ!!!ひとみがこの世に生まれてないかもしれんがな!笑、はは、」
宇髄「生まれてるぞ、確実に」
煉獄「……ん??」
宇髄「…今朝、いや、ここ最近毎日、最寄りの駅で見かけるんだ」
煉獄「………」
宇髄の話に、両手に抱えていた生徒たちのレポートをばさりと床に落とした
宇髄「おいおい…」
煉獄「そ、それは本当か!!?何時に、どこでだ!!?」
宇髄「落ち着けよ…」
煉獄「どこだ!!宇髄!!!」
宇髄「落ち着けって!!!」
宇髄の情報を頼りに、俺たちは早速ひとみがよく現れるという学校の最寄り駅へと向かった
煉獄「見つけたら教えてくれ!!」
宇髄「わかってる、、、けどお前、見つけても急に話しかけたりすんなよ…??」
煉獄「む…!!何故だ!?」
宇髄「あたりまえだろ!!あっちは前世の記憶があるかわかんねーんだぞ!?」
煉獄「……むぅ、、確かにそうだったな、、」
煉獄「………!!」
目の前を横ぎっていったのは、間違いなくひとみの姿だった
少し大人びて化粧をしているようだったが、容姿はかつての彼女のままだった