きめ

□罪転生
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べつ展開

ーーー





牢屋から出してもらい、腕を縛られたまま、隠しに連れられてお館様の元へ連れて行かれることとなった

どうやら本日緊急柱合会議が開かれたそうで、その場で自分の処罰が決まるということだった

あの事件以来、煉獄さんと初めて顔を合わせることに、心臓がすこぶる震えていた

煉獄さんは、どんな顔で私を見るだろう

きっと非難するに違いない、仲間を大切に想う煉獄さんのことだ、たとえ元弟子であろうとも、仲間を斬ったのであれば許すことはないだろう

気持ちが重く慣れば、足取りも一緒に遅くなり、隠しから「ちゃんとあるけ。お館様と柱の方々がお待ちだ」と叱られる

初めて足を踏み入れる鬼殺隊本部に息を飲むと、聞き慣れた大きな声が響き渡り、心臓がどくんと震えた





煉獄「お館様、どうか時間をください!ひとみは仲間を惨殺するような子ではありません!!何か事情があるはずです!」

産屋敷「杏寿郎、」

不死川「らしくねぇぞ煉獄。斬ったのは斬ったんだ。対立違反は同じじゃねぇか。てめぇの弟子だから例外を認めろってかぁ?」

煉獄「そうではない。もう少し詳細に状況調査をしてから…」

不死川「甘いねぇそんなもん。隊員同士の斬り合いは対立違反。状況調査もなにもねーだろ。それに、目撃者もいるし、本人も大人しく認めてんだからよぉ」

煉獄「……。お館様、俺から彼女に話を聞きます。どうか…もう少し猶予をいただけないでしょうか」



目の前に見えた煉獄さんは、そう言いながら跪き、お館様とぞろりと整列した柱達に向かってあたまをふかぶかと下げていた



産屋敷「杏寿郎…」

煉獄「彼女が対立違反を犯したことはわかっています。俺から話をします。それがだめなら、この煉獄杏寿郎が責任を取って、腹を切ってお詫びします」

ひとみ「っ…、、、」

宇髄「おいおい煉獄、、、」

煉獄「お願いします…!!!!」



その場で土下座をしてそうつげる煉獄さんの姿に、目からポロポロと涙がこぼれ落ちた

あの事件が起きてから数日、あんなに空っぽだったというのに

わたしはようやく、自分がしてしまったことの大きさと、その後悔に襲われた




産屋敷「杏寿郎、頭をあげなさい」

煉獄「しかし…!」

産屋敷「ひとみのことを今日すぐに処刑にするつもりはないよ。私ももう少し、本人と話をしたいと思っていたからね」

煉獄「お館様……」

産屋敷「……ひとみ、待たせてしまったね。」

煉獄「……!!」



お館様の声に、一同がようやくこちらに目を向けた

大きく目を見開いた煉獄さんとようやく目があって、罪悪感で心が張り裂けそうだった




産屋敷「今日ここにひとみを呼んだのは、君から見た事実を聞きたかったんだ。それを聞いてから、柱の皆んなに意見が聞きたいと思っていた。…話してくれるかい…??」

ひとみ「………、、、」

煉獄「……お館様、ひとみは口が聴けません」

お館様「そうだったね、、書くものを用意してもらえるかな」

「ハッッ!!」




すぐに隠しが羊皮紙と筆を用意して私に渡した

柱達がじっとこちらを見ている中で身体が固まってしまい、自然に煉獄さんに目を向けてしまう


煉獄「…見たままを伝えなさい。」

ひとみ「……、、」


わたしはそれに頷いて、筆を動かした






不死川「…気付いたら死んでただぁ??」

ひとみ「……









ーーー




お館様が許可をしてくださり、煉獄さんと2人の時間を過ごすことになった

煉獄さんは私と対面すると、いつものように、いや、それよりかは少し困ったように眉を下げて笑ってくれた





煉獄「……気候が良いな。もうすぐ春か」

ひとみ「………」

煉獄「……桜が咲いたら、また花見に行こう。千寿郎がお弁当を作ってくれるだろう。そうだ、今年は甘露寺も呼ぼうか、きっと菓子をたくさん持ってきてくれるぞ笑、」

ひとみ「………」

煉獄「…ひとみが得意な卵焼きも楽しみだ笑、、作ってくれるか?」


煉獄さんがそう優しく問いかけてくれるので、嬉しくて泣きそうになるのを堪えて、小さく頷いた


煉獄「うむ!!約束だな!」

ひとみ「……、、、」

煉獄「………ひとみ…」

ひとみ「……??」

煉獄「……あの晩…ちゃんと話を聞いてやれなくて、…申し訳なかった…」

ひとみ「っ………」

煉獄「…あの隊士と、何かあったのだろう?」

ひとみ「………」

煉獄「…話してくれないか??俺は何があっても…君を信じる。だから…話してほしい…本当のことを…」

ひとみ「………」



落ち着いた様子でそう問いかけてくる煉獄さんに、安心しつつも、心がズキズキと痛む









煉獄「…そうか……」

ひとみ「………」

煉獄「……話せない事情があるのはわかった。少しでも、今日君と会えてよかった」

ひとみ「……??」

煉獄「…大丈夫だ。俺がどうにかする。だから、そんなに心配するな」

ひとみ「………」

煉獄「それから、気は進まないかもしれないが、食事はちゃんと取りなさい。身体が痩せこけている。そんなことでは復帰した時に困るぞ?笑」

ひとみ「………」

煉獄「……俺はお館様と話をしてくる。ひとみは戻りなさい」

ひとみ「っ……」



煉獄さんがお館様と何の話をするのか、それが不安で咄嗟に駆け寄ると、煉獄さんが眉を下げて笑った



煉獄「大丈夫だ!君の処罰をもう一度考えてもらうように、話をしてくる」

ひとみ「っ…」


そうじゃない、私が心配なのは自分じゃない、あなたのことなんだ

煉獄さんが居なくなってしまうのではないか不安で不安で仕方なかった



煉獄「ひとみ…」

ひとみ「っ……、、」

煉獄「…また会いにくるから、、大人しく待っていなさい。これ以上、お館様にも心配はかけたくないんだ」

ひとみ「……、、、」

煉獄「……食事、きちんと食べるように」

ひとみ「…











その日の夜に、煉獄さんとの約束を守るべく、牢屋で用意された夕爾をちまちまと口に運んでいると、見張りの隠したちの話し声が聞こえた



「さっき炎柱様とお館様…話してたんだって…??」

「うん…なんか大変なことになるみたい、、」

「えっ…なになに??」

「炎柱様…自分で責任を取られるつもりみたい…このままだと、切腹になってしまうらしいの…」

「うそっ…!?煉獄さんがっ…!?」

ひとみ「っっっ……!」



隠しの話に思わず茶碗を落としてしまい、ガチャン…と音が鳴り響き、隠したちもしまったとこちらをみる




「…い…今の話……」

ひとみ「………」

「……夕爾、下げますね、、」







ーーー






ひとみ「っ、、っ、、っ、、、」


牢屋からどうにか逃げ出して、そこらの日輪刀を奪い、どうにか外にでて林を駆け抜けた

本部の近くのこの林なら、すぐに人が来るだろう

知らせが来ていないから、さすがにまだ煉獄さんが処刑されたということはないだろう

早く終わらせなければいけない

煉獄さんが無事でいるうちに、早く


その一心で話に入り、人が見つけてくれそうな開けた場所へと向かう

奪ってきた髪にペンを走らせて、急いで文を書いた

そしてその文を足元に置いてから、私はひざまづいて刃を握る

本来なら腹を切るより、首を切った方が早く死ぬことができるだろう、あの隊士のように

でも自分は、それではいけないとわかっていた

だから

私は刃を逆手でもち、刃先を自分の腹に向けた

手がぶるぶると震える、覚悟してでてきたというのに

牢屋を抜け出して、ここでやめたら煉獄さんがもっと悪い目に遭うかもしれない

だから、、だから私は…





思い切って刃を引いた






ひとみ「っ…、、っっ…、、」



そこからは想像もできないほど苦しくて、痛かった

息もできないほどに、痛かった

どんどん自分の体から血が抜けていくのを感じて

呼吸が乱れて、口からも血が溢れて、ゲロゲロと他のものも流れた

目からは涙が流れた

感情で流れているのか、自然に流れているのかもわからない

数分間、長い間ずっと苦しくて

これが自分への罰なのだと自覚した

人を殺した罰、弱い罰、産まれてしまった罰

自分さえいなければ、うまれてこなければ、煉獄さんや、お館様や、みんなに迷惑をかけることはなかった

あの隊士も、死ぬことはなかった

すべての元凶は自分にあったのに、何故すぐにこうできなかったのだろう

ようやく感覚が消えてきて、もうすぐに死ぬのだと悟った

私は祈った
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