きめ

□元弟子
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チリン…チリン…

どうしても川屋へ行きたくなり、重たい腕を伸ばして鈴を鳴らし、千寿郎くんの到着を待つ

良い加減トイレくらい自分でいけるようになりたい、、、そう思いながら天井を見つめると、がらりと障子が開いた

そこに立っていた大きな影にびくりと反応する

現れたのは千寿郎くんではなく、煉獄さん本人だった



煉獄「どうした!かわやか?」

ひとみ「っ……」


まさか煉獄さんがくると思わず、パチクリと瞬きしたまま、身動きが取れなくなってしまった

じーーー!と煉獄さんの強い視線から目を逸らして小さく頷くと、煉獄さんが「わかった!」と返事をして、掛け布団を外し、優しく背中に腕を通し、軽々と身体を抱き上げてくれた 

かわやへ連れて行ってもらってから、また煉獄さんに抱き上げてもらい、部屋へと戻る


煉獄「…随分軽くなったな。食事はちゃんと取っているか??」

ひとみ「……、、」

煉獄「そうか…。ご飯をしっかり食べないと、体力がつかないぞ??」

ひとみ「……、、」

そう元気に話しかけられて、小さく相槌を打った




煉獄「……ひとみ、聞きたかったことがあるんだ」

ひとみ「……??」


再び布団に身体を降ろされると同時に、煉獄さんがいつもより落ち着いたトーン囁く


煉獄「……身体に付いている痣…鬼につけられたものではないだろう??」

ひとみ「ッ……」

煉獄「…誰にやられたんだ??」

ひとみ「……、、」

煉獄「…これだ。誰にやられた??」


スッと腕を掴まれて、腕についた青痣を指摘される


ひとみ「っ……」

煉獄「……隊士にやられたのか??」

ひとみ「っ…、、」


煉獄さんには知られたくなくて、ぶんぶんと首を横に振る


煉獄「……そうか」

ひとみ「………」

煉獄「……ひとみ」

ひとみ「…??っ…」



ぎゅっ

と煉獄さんの大きな身体が私を包み込む

力強く抱きしめられると、身体は痛むが、心は暖かくなった



煉獄「…君が生きていて良かった。俺は心からそう思っている」

ひとみ「………」

煉獄「…負けるな。君は強い。負けるな」

ひとみ「……、、」


煉獄さんの優しい応援に、昔なら素直に喜んでいたが、今はそんな気分にはなれない

本当はそんなふうに思っていないのをわかっているから

一度見捨てられているから、そんな言葉を掛けられた所で、心は回復したりしなかった

小さく首を横に振った

私は強くなんかない、誰よりも弱くて、足手まといで、落ちこぼれだ
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