きめ
□出会い
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ひとみと杏寿郎の出会いはおかしなもので
とても美化できるような出会い方ではなく、当時の思い出話をするのをひとみはひどく嫌がっていた
杏寿郎は料理ができないため、一人暮らしを始めてからの食事はインスタントやスーパー・コンビニの惣菜や冷凍品がメインで、週末は外食することが多かった
職場の仲間たちとは仲が良く、週末でなくともよく飲みに行ったり、外食したりしている
煉獄「宇髄、今日一杯どうだ?」
宇髄「あーすまん、今日は雛鶴たちと先約があるんよ…。来週行こうぜ、あの日本酒や」
煉獄「承知した。ではまた来週な。雛鶴さんたちによろしく伝えてくれ」
宇髄「おぅ。おつかれーす」
煉獄「お疲れ様でした!」
さて夕飯はどうしようか、、と仕事帰りに街に繰り出し、スーパーによるか牛丼でも食べて帰るか…と悩んでいたが、やはり金曜日だし飲んで帰ろう、とよく行く居酒屋へと向かった
こうして一人で飲むことも、特に珍しくはない
酒は一人静かに嗜むもの、と父からも言われていたので、たまには一人で飲む時間も作っていた
いつもいく居酒屋は鬼滅学園の最寄駅の近くにあり、宇髄と行ってから、気に入って数回通っている
ここは焼き鳥がメインで、酒も日本酒や焼酎が豊富にある
よく一人で飲みに行くものだから、店の店主にもすっかり気に入られていた
「おぅ!煉獄先生!」
煉獄「こんばんは。ひとりなのだが、良いだろうか」
「もちろんだ!カウンター席で良いかい」
煉獄「うむ。」
「何にする??」
煉獄「うーーん、、今月のオススメは何だろうか?」
「
ーーー
「煉獄先生、何かお代わりはいるかい?」
煉獄「……では…」
2杯目を終えて、最後に一杯追加しようと、頭上のメニュー看板を見上げた時だった
「うわああああああああんっ…」
一つ離れて隣の席に座っていた女性が、突然物凄く声を上げて泣き始めたので、杏寿郎と店主が驚いて同時に彼女に目を向ける
どうやら女性も一人で飲みにきているようで、カウンターで顔を手で多いながらボロボロと泣いていた
あまりの泣きように、店員がおしぼりを差し出したが、「良いんですっ…良いんですっ…」と泣き続けている
「酔ってんのかねぇ、、、」
煉獄「……大丈夫だろうか…」
「…先生気にせんで、、お代わりどうする?」
煉獄「…同じのをいただこう」
「同じのね!すぐお持ちします」
注文を終えてから杏寿郎が彼女に視線を戻すと、彼女はまだボロボロと泣いて、ヒック…と肩を揺らしながら、ジョッキを口に運ぶ
泣きながらビールを喉に流し込んだせいか、口元からビールがこぼれて「コホッ…!」とむせて咳き込んでいた
煉獄「……!」
「ッ…コホッ、、げほっ…ひぅ、」
煉獄「…大丈夫ですか??」
「っ…??」
苦しそうに咳き込む彼女に、とっさにおしぼりを持ってかけよった
酔っ払いに自分から絡む必要ないとわかっていたが、女性が1人で泣いているのだから、助けてあげなければと自然に身体が動いてしまった
煉獄「…これ使ってください」
「ぅ…ぁ…ぁりがとうございます、」
煉獄「……スカート、濡れてしまいましたね、、…店主!すまないがお手拭きをもう一ついただけるだろうか!」
「ぁ…す…すみません、良いんです、これくらい、」
先ほどから「良いんです」と言うが全く良くなさそうなので、杏寿郎は店主からお手拭きを受け取ると、彼女に手渡してにこりと微笑んだ
「……ズビ、、」
煉獄「…大丈夫だろうか!」
「ご、ごめんなさい、わたし、迷惑を…かけて…」
ウルウル…と彼女の目が潤んでから瞬きと一緒にまたポロポロと涙が溢れて言葉はふるふると震えている
「ぅぅっ…」
煉獄「…!!構わない!訳は知りませんが、辛いことがあったのだろう!人間助け合いだ、気にすることはない」
「っ…、ぅ…ぅぅ〜、、ありがとうございず、、、」
煉獄「うむ!!」
「ぅぅぅぅ、、、」
煉獄「共に頑張ろう!頑張って生きていこう!!」
ポムチっ!!!
と杏寿郎が励ましの声をかけて彼女の肩を叩いた瞬間だった…
ーーー
ひとみ「……ぁ……??」
バサリ、、、と目を覚ますと、自宅の玄関で眠りこんでいたことがわかった
靴は履いたまま、服もコートも着たまま、顔はなんだかカピカピするし、頭はガンガンに頭痛がしてくらくらと目眩までする
一体なんでこうなった……と呆然とするが、目が回るせいで何も考えられない
身体が汚くて気分がわるいので、シャワーを浴びて一旦ちゃんとベッドで寝よう…
そう思いそのままシャワールームに直行し、シャワーを浴びて頭もスッキリし、昨日の服を洗濯機に投げ込もうとした時だった
ひとみ「……ん…??」
ポケットの中に見慣れないハンカチが入っていて、首を傾げる
バーバリーのメンズのハンカチ、明らかに自分の物ではない、一体誰の……
そこまで考えて、ようやく昨日のことを思い出して一気に気分が青ざめた
昨日はようやく正社員になれると思っていたのにそれが叶わず、うちひしがれて、やけ酒をしようと始めて一人で居酒屋に立ち寄った
元々お酒があまり得意ではなかったが、こういう時は飲んで飲んで飲みまくれば良いのだと、周りを真似てみようとした結果、酔いがまわったら感情のコントロールができなくなってしまい、居酒屋でひとりわんわん泣いてしまった
隣にいた男性客が声をかけてくれたが、他人にまで迷惑をかけて何してんだかと思うと更に泣けてきて、もうどうしようもない、
そう思った瞬間には全てを吐き散らかしてしまい、そこから体調がものすごく悪くなって、その場にいた人たちに偉く迷惑をかけてしまった
確か店の掃除をしたあとに、あの男性がタクシーに乗せてマンションの前まで送ってくれた気がする
そうだ、その時にハンカチを貸してくれたんだ…と、ようやく記憶を辿った
最終的にマンションの出入り口で鉢あった住人に、男性が「彼女ここに住んでいるそうなのでお願いしても良いだろうか、、」と受け渡し、自分は部屋までたどり着いた
それを思い出した瞬間にはもうどうしようもない羞恥心と罪悪感に苛まれて、こんなことをしている場合ではない、とすぐに着替えて外へと向かった
ーーー
昨夜の記憶を思い出したひとみは開店同時にデパートに向かい、大量の菓子折りを購入して自宅へと帰った
メイク、髪型を清潔に整えて、服装も黒を基調とした、スーツに近いようなちゃんとした格好に着替え、菓子折りを持って部屋を出る
誰に迷惑をかけたのかわからないので、一通り一部屋一部屋に挨拶に向かい頭を下げた
途中で部屋まで送ってもらった主が判明したが、同じくらいの年の女性で、謝罪をすると「私も良くやるから気にしないで」と言ってくれた
一応全部屋に菓子折りを届け終え、初めて住んでいるのが小さめのマンションで良かったとあんよした
さて、本ちゃんはここから…
1番に迷惑をかけた居酒屋には高級菓子折りを買ってきた、もちろんあの男性にも
ただ、居酒屋の場所はわかるものの、あの男性の居場所はわからない、きっと推定もできないだろう
一応ハンカチも持って、二つ菓子折りをぶら下げ、昨晩の居酒屋へと向かった
ひとみ「ぁ…あの〜…、、、」
「お客さんすんません、まだ営業前で……おぉ、昨日の姉ちゃんじゃねーか笑」
「大丈夫だったか?笑」と店の店主は笑いながらひとみに尋ねた
ひとみ「き、昨日は申し訳ございませんでしたッッ…!!!!」
「はは笑、良いって良いって、居酒屋やってりゃよくあることよ」
ひとみ「ですが、皆様に多大なるご迷惑を…」
「うちは大して笑、、隣にいた兄ちゃんいたろ?あの人が全部やってくれたからよ」
ひとみ「あの方には本当に申し訳ない限りです〜、、、、あの…これ皆さんで召し上がってください、、、」
「わざわざすまんね!気にせんで良かったのに」
ひとみ「そんなわけにはいきません、、あの、お代をお支払いしていなかったですよね…?いくらでしょうか、、」
「倍額で支払わせていただきます、、」とひとみが財布を用意すると店主が軽快に笑った
「お代もあの兄ちゃんが払ってくれたんだ、だから受け取れね〜よ」
ひとみ「……え!?!?お代まで支払っていただいたんですね、、、どうしよう、、、困った、、、…あの、あの方は常連さんでしょうか?どうしてもお詫びがしたいのですが、、」
「おう!あの兄ちゃんならよく来るよ!また近々来るんじゃねーかな、この近くで働いているようだから」
ひとみ「そうですか、、あの、もし可能でしたら、これをお渡ししていただくことはできますでしょうか、、ハンカチもお借りしたようで、、」
「うちは構わんけど、直接渡さんで良いのかい??」
ひとみ「…あんなにご迷惑をお掛けしたので、もう顔も見たくないかと、、、」
「ははは笑、なるほどな、そういうことなら預かろうか。必ず渡せる保証はないぞ?」
ひとみ「はい、、、…ぁ、あとお代の分も返さないと、お金はさすがに渡せませんよね…??」
「金は預かれねぇな〜、、、キープボトルでも送るかい??」
ひとみ「ではそうします、、キープボトルが何かわかりませんが、、、」
「かっか笑、やっぱり、姉ちゃんあまり飲みなれてねぇだろ?笑」
ひとみ「実を言うと、一人飲みは昨日が初めてで、、、、」
「なるほどな!笑、うちは一杯ずつじゃなくて一瓶での購入もできてな、買った瓶をうちで預かって、いつでも出せるようにしてんのさ」
ひとみ「なるほど…!そんな便利なシステムがあったんですね…!?では私が瓶を買うので、あの方に出していただければ…」
「おうよ。どれにする?って、あまりわからんか笑、、」
ひとみ「選んでいただけると大変助かります、、、1番高価なものはどれでしょうか」