きめ

□イベント
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「「煉獄先生!!!」」

煉獄「ん??…君たち!!」


職員室に鳴り響く若々しい声に煉獄が振り返ると、久々に見る3年生の生徒たちの顔があった

高校は3年生の後期になると受験勉強のため、ほとんど生徒たちが学校に通わなくなる

顔を合わせるのは週に一度のホームルームのみで、担任を持っていなければ、彼らの顔を見ることはほとんどない

煉獄は1年生の担任であるため、3年の生徒たちとは数カ月ぶりであった


煉獄「久しいな!!元気だったか??」

「うん!先生も元気そう〜!」

煉獄「見ての通りだ!今日はどうしたんだ?確か明日はセンター試験だろう」

「うん、だから煉獄先生に喝入れてもらおうって!ね〜」

「ね、先生励まして!」

煉獄「はは笑、なるほどな!よし!3年間の努力の結果を見せる時だ!!気合いを入れろ!!」



生徒たちからの願いとあらば、煉獄も気合いをいれて熱い言葉を交わした




煉獄「さて、明日は朝早いだろうから、今日は早めに帰って休みなさい。また試験が終わったら、たくさん話をしよう!」

「はーい、、はぁ、やだな〜、明日雪予報でてるし、、、」

煉獄「そのようだな、、暖かくして、風邪を引かないようにな」

「ありがとう先生ー」

煉獄「明日の会場は近いのか??」

「うん、わたしたちは無限大で受けるんです!」

「うちのクラスの子は無限大会場が多いよね!」

煉獄「…!!無限大学か…、」



「ひとみの職場だな…」と内心考えながら腕を組む煉獄に、生徒たちが首を傾げた



「先生??」

煉獄「む…!すまん、何でもない!それでは、気をつけて帰るように!」

「はーい!レンキョウ先生ありがとう〜」

「またね〜!」

煉獄「うむ!頑張れ!!」


手を振って帰っていく生徒を見守ってからデスクに戻ると、隣の席の胡蝶カナエが微笑んだ


カナエ「受験生はいよいよ本番ね〜」

煉獄「うむ!ほどよい緊張感が伝わってきた!」










ーーー



煉獄「ただいま!」

ひとみ「……!!おかえりなさい〜」



煉獄が自宅に帰ってリビングを覗くと、ひとみが珍しく眼鏡をかけて何やら資料を読み込んでいた

煉獄が帰ってきたことに気づくと、資料を片付けてパタパタと煉獄の元にかけよる



ひとみ「すぐ夕飯にしますね!」

煉獄「うむ、俺も手伝おう!」

ひとみ「ありがとうございます!」

お互い顔を合わせてニコリと微笑んでから、隣あって夕飯の準備を始めた


煉獄「仕事していたのか??」

ひとみ「…??はい笑、明日のマニュアルを……ぁそうだ、杏寿郎さん、わたし明日仕事なんです…、、」

煉獄「む!センター試験か!!!」

ひとみ「あたりです笑、、」


ひとみが眉を下げて笑いながら食事を食卓に運び、準備が整ってから、2人で手を合わせて「いただきます」と食事を始める



煉獄「うちの生徒たちが、明日無限大で受験すると言っていた!」

ひとみ「へ…そうなんですか…!?」

煉獄「うむ!なんだか縁を感じるな!笑」

ひとみ「杏寿郎さんの生徒さんたちが来ると思うとわたしは少し緊張します、、」

煉獄「ははは笑、」


「しっかりしなければ…!」とひとみがキリッとするので、煉獄がくすりと笑った


ひとみ「明日は天気が良くないみたいで、、皆んな無事受けれると良いのですか、、」

煉獄「そうだな、、ひとみは明日どんな仕事をするんだ?」

ひとみ「明日は看板持ちなんです〜、、」


「嫌だなぁ、、、」とひとみがため息つきながら沢庵をかじった


煉獄「看板持ち??」

ひとみ「たぶん駅前とかで一日中看板持って立っていると思います、、笑」

煉獄「よもや…、、、雪が降るのにか、、」

ひとみ「ひどくならないと良いなぁ、、、」

煉獄「うむ、、、心配だな…」

ひとみ「大丈夫です笑、一日中といっても、ちゃんと交代してやりますから」

煉獄「それはそうだろう、、明日は暖かい格好で行かねばな…」

ひとみ「はい!ホッカイロもたくさん支給されてますから、私のことは心配不要です!」

煉獄「そうか、、うーむ、、」

ひとみ「それより、生徒さんたちが無事受験できるよう、祈ってあげてくださいね!」

煉獄「笑、、ひとみは優しいな。ありがとう」

ひとみ「ふふ笑、、」

煉獄「…うん、うまい!!今日もひとみの作った食事はうまいな!!」

ひとみ「良かった!



ーーー





ひとみ「杏寿郎さん、お風呂ありがとうございました。すみません、先に入ってしまって…」

煉獄「ん?当然だ!!それより、明日もあるし先に眠っていて良かったんだぞ?」

ひとみ「実は寝る前に杏寿郎さんにお願いしたいことがあって、、、」

煉獄「む…?なんだろうか?俺にできることなら何でも言ってほしい!」

ひとみ「うん…、、お休みの日に申し訳ないんですが、、明日もし私が寝ちゃっていたら起こしてもらいたくて…、、、」


ひとみが俯いて指をもじもじとしながら煉獄にお願いをした



煉獄「もちろんだ!!ひとみは朝が弱いからな笑」

ひとみ「すみません、、起きれなかったらと不安で、、」

煉獄「早起きは得意だから任せてほしい!何時に起こせば良い??」

ひとみ「5時半には起こしていただけると…」

煉獄「5時半か…!わかった!必ず起こそう」

ひとみ「ありがとうございます、、、」

煉獄「うむ、だから安心して眠りなさい」


眉を下げてこちらを見つめるひとみに、煉獄がそっと手を伸ばし、撫で撫でと頭を撫でた



ひとみ「ありがとうございます。とても頼もしいです」

煉獄「はは笑、それは良かった。…さあ、明日は早いから、もう電気を消すぞ?」

ひとみ「はい!おやすみなさい、杏寿郎さん」

煉獄「おやすみ、ひとみ」


ひとみが布団に収まるのを確認してから、パチリ…と電気を消して、煉獄もすぐにベッドの中へと入った




ーーー




ひとみからの依頼通り、翌朝煉獄は5時半前に目を覚まし、まだ暗い外を確認してから、そっとひとみの肩を揺らした

んん〜、、とひとみが眉に皺を寄せてイヤイヤと枕に抱きつき始める

休みの日の朝はいっぱい寝たい、、とひとみがいつも口にしているのを知っているので、ここで無理に起こすのはとても可哀想だが、大事な仕事となれば仕方がない


煉獄「ひとみ、朝だ!頑張って起きよう」

ひとみ「…ゃぁ、、、」

煉獄「ひとみ、、辛くともがんばろう」

ひとみ「ぅぅ、、、」

煉獄「…全国の高校生たちのためだ、がんばろう!」

ひとみ「ぁぅ、、、」

煉獄「……ひとみ、俺の生徒のために、頑張ってほしい」

ひとみ「……、、、」


煉獄のその言葉で、バサリ、、と身体を起こして、カッ…!と目を見開くひとみ


ひとみ「…行きます…!!」

煉獄「うむ!!偉いぞ!!」

ひとみ「杏寿郎さんの生徒さんのためです!!」

煉獄「うむ!頼もしい!!」



目を覚ましたひとみが着替えを始めたので、煉獄は先にリビングに向かい、朝の珈琲と、軽い朝食の準備を始めた

朝はいつもひとみが大量生産してくれている冷凍おにぎりを食べることが多いので、それを電子レンジにかけて、お漬物とバナナを用意する

朝食を用意した頃には、着替えとメイクを終えたひとみがリビングに現れた



ひとみ「杏寿郎さん、起こしてくれてとても助かりました。ありがとうございました」

煉獄「うむ、当然のことだ!」

ひとみ「休んでいて良いんですよ…?休日ですし、、」

煉獄「ひとみや生徒たちが一日頑張るというのに休むわけにはいかん!オレも共に戦おう!」

ひとみ「た、戦う…??」


煉獄の気合いに、ひとみがきょとんとしてハテナを浮かべた



ひとみ「ぁ、杏寿郎さん朝食までやってくれたんですね!」

煉獄「いつもので良かったか??」

ひとみ「すみません、ありがとうございます!嬉しいです」

煉獄「一緒に食べよう」

ひとみ「はい!!」


食卓について一緒に朝食をとりながらニュースを流すと、今日のセンター試験のことや、天気予報のことが流れていた



ひとみ「電車止まらないと良いんですけど、、」

煉獄「そうだな、、もう既にちらほら降り始めているようだな」

ひとみ「ぁ、本当だ…、嫌だなぁ、、」

煉獄「うむ、、駅まで一緒に行こう」

ひとみ「へ…!?そ、そんな、ダメです!お休みなのに」

煉獄「いつものジョギング代わりだから気にするな!」

ひとみ「でも、、、」

煉獄「そういえば牛乳が切れていたし、買い物もついでにしたいからな!」

ひとみ「……、、すみません、、」

煉獄「君が謝る必要はない!他に何か買って置くものはあるだろうか??」

ひとみ「ミロもお願いします、、、」

煉獄「あぁ!そうだったな!ミロも買わねば」



「牛乳買い忘れてました、、」とひとみが申し訳なさそうにするので、煉獄がぽんぽんと頭を撫でて励ました







ひとみ「ひぁ、、、寒い〜〜、、」

煉獄「冷えるな、、大丈夫か??」

ひとみ「はい、、ホカロン貼ってるので」


家を出た瞬間に冷たい風が吹いていて、ひとみがダウンに顔を埋めながら「うぅ、、」と身震いした

煉獄が鍵をかけると、ひとみにそっと手を差し出し、2人は手を握りしめる



煉獄「こうしていれば少しはマシだろう!」

ひとみ「はい、、だいぶ、、」


手を繋ぎながら駅までの道を歩くと、ちらほらと…少しずつ雪が降りてきていた


ひとみ「早く終わらせたいです、、」

煉獄「うむ、、1日辛いだろうが、頑張ってくれ」

ひとみ「はい、、、」


駅前に到着し、ひとみが名残おさそうに煉獄の手を離した


ひとみ「ありがとうございました、、、」

煉獄「はは笑、顔が泣きそうだぞ笑、」

ひとみ「離したくないです〜、、」

煉獄「帰ったらまた暖めよう。オレはひとみを応援しているぞ!!」

ひとみ「はい、、、それでは行ってきます」

煉獄「うむ、気をつけてな」



ひとみがうるうると目に涙を溜めながら改札をくぐって駅のホームへと向かっていくので、煉獄はひとみの姿が見えなくなるまで見守った





ーーー




昼近くになると雪は本降りになり、部屋から窓越しに外を見るとまるで吹雪のようだった

ニュースでは一日中天気のことと、電車の運休に関することが流れている

残念ながらいくつも路線が止まってしまっているようだ

ひとみは大丈夫だろうか…
生徒たちは無事会場についただろうか…

心配ごとがやまほどあり、いてもたってもいられずに、昼食ついでに外へとむかった




駅前の牛丼屋で昼食をとってから、やはり心配だと、無限大の最寄駅へと向かう

どうやら鬼滅学園の最寄りからの路線は無事運行しているようで、一安心だ

駅に着くと、ひとみが言っていた通り駅前に受験会場の看板を持って立っている人が数名おり、みなダウンコートに顔を埋めながら辛抱しているようだった

ひとみは何処だろうか…

と駅から無限大までの道を歩くと、見慣れたコートが見えて足を止める

ひとみが看板を持ちながら、受験生の道案内をしているところだった

こんなに寒い中頑張っているな…と少し遠くから見守ると、案内を終えたひとみが煉獄に気づき、目を丸くしてから一気に顔を赤く染める




煉獄「頑張っているようだな!」

ひとみ「きょ、杏寿郎さん…!?どうして…」

煉獄「生徒たちが無事に着いたかどうしても気になってしまって、、いてもたってもいられなくなっらてな、、」

ひとみ「笑、、杏寿郎さんらしいですね。大丈夫です、試験時間もずらしていますから」

煉獄「うむ。とりあえず電車が運行していたので安心した!」

ひとみ「寒いのにわざわざ、、、」

煉獄「ひとみにも会いたかったしな!仕事中のひとみはこれを逃せば見れないだろう!」

ひとみ「ぅ…、、、」


恥ずかしいです、、、と顔を真っ赤にして俯くひとみに、煉獄がくすりと笑ってから、ひとみのダウンのポケットに手を入れた



ひとみ「……ほ??」

煉獄「差し入れだ。休憩時間に食べなさい」

ひとみ「…!!わざわざすみません、、ありがたくいただきます」

煉獄「うむ!とりあえず顔が見れて良かった!午後も無理せず、頑張ってくれ」

ひとみ「はい!!!がんばります!!!」
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