きめ

□元弟子
1ページ/4ページ







煉獄「突然ですまないが、今日で弟子を辞めて欲しい」

ひとみ「………」


煉獄さんのその言葉はあまりに突然で、私の頭をスッと通過していった



ひとみ「っ……??」

何でですか…??

そう声に出して聞きたかったが、自分には声が出せなかった

ある日の任務で、鬼の血鬼術に掛かり声を奪われてしまったのだ

慌ててオロオロとすると、煉獄さんは声のトーンも変えずに、淡々と話を続けた


煉獄「理由をはっきり言う。君には剣士の才能がない」

ひとみ「………」

煉獄「ここ数ヶ月共に過ごして鍛錬したが、一向に成長が見えない。正直、鬼殺隊をやめた方が良いと思う」

ひとみ「………」

煉獄「すぐに辞めるようなら、俺が親方様に話をつけよう。」

ひとみ「っ……、、」



ぐさりぐさり、、と煉獄さんの言葉は次々と胸を貫いた

あまりに淡々と進む話に、焦っていつものジェスチャーで必死に意思を伝える

私はまだやれる、まだ頑張れる

もっと鍛錬する、もっともっと努力する

もう迷惑かけないから、足引っ張らないから、

必死で伝えるうちにポロポロと目から溢れた



煉獄「…すまないが、俺はもう君の面倒は見れない」

ひとみ「………、、、」

煉獄「……継ぐ子ができたんだ。明日から彼女の鍛錬で忙しくなる」

ひとみ「………、、、」

煉獄「もう一度言う。もう君の面倒は見れない」

ひとみ「………」


煉獄さんは今までになくまっすぐな瞳で、はっきりとそう伝えた

なんで…??どうして…??

諦めるな。ひとみは強い。
耐えて耐えて、ひたすら鍛錬し続ければ、
いつか君も立派な剣士になる。

ずっとそう言ってくれていたのに…

見捨てないから、って、言ってたのに…



ひとみ「………」

煉獄「…行き場がないなら、隠しになると良い。君に剣士は向いてない」

ひとみ「………」

煉獄「……どうする??」

ひとみ「………」


頭が真っ白で、何も考えられなかった

日頃から、いつか煉獄さんに見捨てられるんじゃないかと恐れることはあったが

それでもいつも煉獄さんが笑いかけてくれて

君は俺の弟子だから、心配するな。

そう声をかけてくれて、安心してしまっていた

こんな日がすぐそこにせまっているとも思わずに

辛い、すごく辛い

煉獄さんに見捨てられることは、死ぬより恐れていたことだった


ひとみ「……、、、」

煉獄「………」


「遠慮します」その意図でふるふると首を横に振り、感謝の意味を込めて頭を深く下げた

それからよろよろと弟子として借りていた煉獄家の一室を片付け、自分の荷物をすべて風呂敷に包んで煉獄家を飛び出した




ーーー







「ひとみ、炎柱様の所から追い出されたらしいよ」

「ついに…!?良いキミだね、調子のってたし」

「噂だと、喋れないし足手まといって炎柱様が言ってたらしいよ〜笑」







ひとみ「……、、、」

藤の家紋の宿で、たまたま他の女性隊士たちと鉢合わせになって、陰口を聞かされた

自分が喋れないことを良いことに、わざと聞こえるように話しているのだろう

聞こえないフリをしながら、もしょもしょ…と天ぷらを口に運ぶ



「そういえば、炎柱様の新しい継ぐ子、甘露寺さんだっけ??」

「相当優秀らしいよ!!炎柱様が見込んだだけあるよね!」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ