きめ

□現代
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風が冷たくなってきて、いよいよ季節は秋本番になってきた

約束していた駅までやってきて、目印になりそうな銅像の前にたち、パッとあたりを見回す

どうやら彼はまだ来ていないようなので、スマホを取り出して『今つきました。銅像の前にいますね』とメッセージを打った

数分経つと、すぐに既読がつき、『すまないな。今隣の駅だ。もう少し待っていてくれ』と返事がくる

もうすぐにくるだろうと、了解のスタンプを送ってから、時間つぶしに他のアプリをチェックした


ゾロゾロ…と改札からまとまった人の流れが見え、「お待たせー!!」とあたりが賑やかになる

人の流れに目を向けると、一際目立った綺麗なオレンジ色の髪の毛を見つけて、嬉しくなって手を挙げた

こちらに気づいた煉獄が、耳につけていたイヤホンをはずして、笑顔で向かってきた



煉獄「すまないな!待たせてしまった」

ひとみ「お疲れ様です!仕事が早めに終わったので、色々見てて…」

煉獄「うむ!早めに終わるのは良いことだな!」


煉獄はニコリとそういうと、首に巻いていたマフラーをするりとはずす


ひとみ「……??」

煉獄「夜になると冷えるだろう」

ひとみ「ぁ…」


ぐるぐる、、と自分のマフラーをひとみの首に巻くと、ぽんぽん、、と頭を撫でるので、ひとみがマフラーに顎を埋めて顔を赤くした


ひとみ「でも…煉獄さんのなのに、、寒くないですか…??」

煉獄「歩いてたら逆に熱くなってな!笑、、気にするな」

ひとみ「煉獄さんは代謝良さそう…!!」

煉獄「日々鍛えているからな!!」


はっは、と笑う煉獄に、ひとみもふわりと笑う


煉獄「行こうか。腹が減っただろ?」

ひとみ「はい…!!今日すごく楽しみにしてました!」

煉獄「オレもだ!」


2人で駅から少し離れた居酒屋に向かう

そこは煉獄の友人、宇髄のオススメの店だそうで、酒も食事も美味しいとのことだった

ずらりと並ぶお酒の種類に、ひとみが「ほぅ…」とメニューを覗き込む



煉獄「ひとみは何が飲みたい?」

ひとみ「ぅーーん、、、いっぱいあって悩む…、、」

煉獄「はは笑、とりあえず、ビールにしておくか?」

ひとみ「うん…!!そうします!」


煉獄がすぐに店員を呼び、「とりあえず、生二つをお願いします」と注文してくれた

煉獄はいつもものすごく気が利く

すぐに2人分のビールが運ばれてきて、2人は「お疲れ様」とコップを合わせた



煉獄「うん!!うまい!仕事終わりのビールは格別だな!!」

ひとみ「うん…!!美味しい美味しい!」


2人でビールを一口喉に流し込んでから、メニューを覗き込んで、あれやこれやと食べ物を注文した



ひとみ「ここはよく宇髄さんと来るんですか??」

煉獄「あぁ、実はオレもココは一度しか来ていなくてな!唐揚げが美味かったから、次はひとみと来たいと思っていたんだ!」

ひとみ「っ…////」


煉獄がそうニコリと眩いばかりの笑顔を向けてきたので、ひとみがポッと顔を赤くする


煉獄「ん、どうした??」

ひとみ「ぁ、か、唐揚げ、楽しみです!!」

煉獄「うむ!きっと気にいると思うぞ!」

ひとみ「秋だからかずっとお腹が空いてて」

煉獄「食欲の秋か!秋は美味いものが多いからなぁ」

ひとみ「煉獄さんも秋の食べ物が好きですか??」

煉獄「秋は好きなものが多い!俺はサツマイモであれば何でも好きだ!」

ひとみ「私もお芋好きです!もうちょっと寒くなったら、焼き芋がしたいですねぇ」

煉獄「はは笑、それは良いな!今度学校の行事で、グランドで焼き芋をやるんだ」

ひとみ「え!?あー良いですねぇ、なんだか懐かしいです!」

煉獄「予定が合いそうだったら、ひとみの分も取っておいてやろう!」

ひとみ「食べたい…!!ぁ、けど悪いです…生徒さんの分なのに…」

煉獄「うむ…実はな…」

ひとみ「……??」

ちょいちょい、、と煉獄が耳を貸すように手招きするので、ひとみが体を傾ける


煉獄「学校の行事と言っても、職員が秘密でやっているだけなんだ笑」

ひとみ「ぁ、そ、そうなんですか!?」

煉獄「あぁ笑、生徒見つかったら分けたりもするがな」

ひとみ「なるほど…!!煉獄さんは、生徒さんから人気がありそう!!」

煉獄「人気かはわからんが、皆熱心で良い生徒ばかりだぞ!」

ひとみ「ふふ、きっと煉獄さんが熱心だからですね!」

煉獄「うむ!生徒には常に真っ直ぐ向き合っているつもりだ!」

ひとみ「わたしも煉獄さんが先生だったら、もっと歴史が好きになれたかもしれません、、」

煉獄「ひとみは歴史が苦手なのか??」

ひとみ「今でも少し…、、あまり何時代に何があったかとかを覚えられなくて、、」

煉獄「うむ!そういう生徒はよくいるぞ!覚えるのには、やはり興味がなくてはな!」

ひとみ「ぅ…、、、耳が痛いです、、」

煉獄「ひとみが悪いわけではない!興味がでるように指導をするのもまた、教員の責務だからな!」

ひとみ「ほ…、、、」

煉獄「今度、俺が指導してやろう」

ひとみ「煉獄さんが指導してくれるなら興味が出そうです!」

煉獄「はは笑、その代わり、俺の指導はスパルタだとよく言われるから、覚悟しておくように!」

ひとみ「うっ…、、、」


煉獄の発言にひとみがどきりとすると、「冗談だ!笑」と煉獄が笑った



ひとみ「んーーっ!!唐揚げぷりっぷりですね!!!」

煉獄「そうだろう!!」

ひとみ「美味いっ!!!」

煉獄「気に入ったようで良かった!」

ひとみ「美味い美味い!!ありがとうございます!煉獄さん!」

煉獄「こちらこそだ!笑」

ひとみ「む〜〜っ美味しい〜」


はむはむっ、とひとみが唐揚げを幸せそうに頬張ると、煉獄が微笑みながらそれを見守り、優しく頭を撫でた


ひとみ「…???」

煉獄「…!すまん!愛らしくてついな!!」

ひとみ「っ!?!?あ、愛らしい!?」

煉獄「うむ!ひとみは愛らしいな!!」

ひとみ「へ……へ!?!?げほっ」

煉獄「大丈夫か!?!?」


煉獄のド直球な言葉にひとみが動揺して唐揚げを喉に詰まらせた










ひとみ「今日はすみませんでした、、大騒ぎしてしまって、、」

煉獄「良いんだ!俺が驚かせてしまったようだからな!」

ひとみ「びっくりしました、、、」



駅まで2人で向かい、お互い別々の方面のため、ホームの下で向かい合う



ひとみ「ありがとうございました!すごく美味しかったです!」

煉獄「うむ!また美味いものを食べに行こう」

ひとみ「次はわたしがご馳走します!!」

煉獄「はは笑、君が来てくれるだけで嬉しいんだ。そこは気にしないで良い!」

ひとみ「でも……、、、」

煉獄「笑、、次の予定、また連絡しても良いか??」

ひとみ「はい…!!今日はお疲れ様でした!明日学校なんですよね?頑張ってください!」

煉獄「ありがとう!!ひとみはゆっくり休んでくれ!」

ひとみ「はい!!」

煉獄「笑、、それでは、またな。おやすみ」

ひとみ「おやすみなさい、煉獄さん」

煉獄「うむ!遅いから気をつけて帰るんだぞ??」

ひとみ「はい!!」


お互い名残惜しくも、翌日煉獄が休日出勤なこともあり、手を振ってから別々のホームの階段を駆け上がった




ひとみ「…ぁ…!」

向こうのホームから聞こえる電車のアナウンスに、ひとみが小走りでホームまで駆け上がると、向こうのホームに煉獄が立っていて、こちらに気付いてにこりと微笑んでくれた

間に合った、、と内心あんよしてから、ひとみも微笑んで煉獄に小さく手を振ると、煉獄も手をふり返す

次の瞬間、2人の間に電車が到着して、がやがやと電車に乗り込む人ごみで煉獄の姿が見えなくなってしまった


ひとみ「はぁ、、、、」


付き合いたての盛り上がりの時期だからだろうか

デートの終わりがいつもたまらなく寂しい

もっと一緒にいたい、、とついつい思ってしまうが

大人同士の付き合いなので、わがままはやめようと、煉獄を想って今日は早めに解散をした

寂しくなる気持ちを抑えて、煉獄が乗った電車を見送ってからスマホに目を落とすと、とん…と肩に手をおかれて、びくりと振り返る



ひとみ「っ…れ、煉獄さん…!!」

煉獄「驚かしてすまない!名残惜しくなってしまって、、」


「男のくせに不甲斐ないな」とぽりぽり頭をかきながら笑う煉獄に、ひとみがぽかんとしてから笑った



ひとみ「…私もです。また顔が見れて嬉しい」

煉獄「笑、、見送らせてくれ。君を見送った方が安心する!」

ひとみ「……はい!!ぁ、煉獄さん!」

煉獄「む?どうした??」


電車が来る時刻を確認すると、自分がのる電車が来るまであと10分はある


ひとみ「ちょ、ちょっと待っててください!」

煉獄「ひとみ…!!」

ぱたぱた、、と小走りでホームを走り、近くにあった自動販売機で2人分の缶コーヒーを購入する

後ろから追いかけてきた連絡に、そっとそれを手渡した


ひとみ「はい!煉獄さんの分!」

煉獄「……!!よもや…、すまないな」

ひとみ「いえ!唐揚げのお礼です!」

煉獄「良いと言ったのに笑、、」

ひとみ「私の気がおさまりません!」

煉獄「笑、ありがとう。あったかいな!」

ひとみ「はい!!」

煉獄「だがしかし!!」

ひとみ「……へ??」

煉獄「ホームを走るのはよくない。危ないぞ??」

ひとみ「ぁ…/////」


ぽす…と頭を撫でられて、ひとみが顔を真っ赤に染める



ひとみ「す、すみません、嬉しくてつい…」

煉獄「ははっ笑、俺も嬉しいが、それよりは君の無事の方が大事だ。それに、周りの人が迷惑するかもしれん」

ひとみ「は、はい…////大人なのにお恥ずかしい限りです…、、、」

煉獄「大人でも間違うことはある!次からは気をつけるように」

ひとみ「はい…先生、、、」

煉獄「はは笑、先生か、ひとみに呼ばれると不思議なもんだな!」



煉獄の叱り方はそれはそれは優しく、愛のある叱り方だと感じ、普段生徒の面倒をよく見ているのだと感じられた

おかげでひとみも素直に煉獄に謝り、ふたりでプルタブを開けて、並んでホットコーヒーを喉に流し込んだ



ひとみ「ハ…!!す、すみません!よく考えたら、明日早いし…コーヒーじゃない方が良かったですね!?」

煉獄「む…??気にするな!明日の準備で帰ったらやることが少々あるんだ!酔い覚ましに丁度良い!」
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