パラレルSS-T
□止まった時間-1-
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「ヴィンセントッ!」
「...クロード。アレは言い過ぎだ。」
「でもッ!」
「...4年前のあの時から彼は変わってない。18歳ならもうかなり身長が伸びていてもおかしく無いだろう。...成長出来ない辛さは彼自身にしかわからないんだ。」
「...。」
「もちろん、僕達もクロードも心配している。けど、僕達にもヴィンセント君自身にもどうする事も出来ないだろう?クロードがヴィンセント君に元気になって欲しいのはわかるけど、あの言い方は良くない。」
「...別に元気になって欲しいわけじゃ...。」
「クロード...。ヴィンセント君と喧嘩したいわけでも、傷付けたいわけでもないだろう?」
「...うん。」
「謝った方が良い。...ね?」
「......行ってくる。」
「また喧嘩しないようにね。」
「しねーよッ!///」
やっと図書館で見つけたヴィンセントは、1人窓辺に立って泣いているようだった。
「...っ...ぅっ...。」
「...ヴィンセント。」
クロードが声をかけるとビクリと震えたのがわかった。
「...ッ!」
走り去ろうとするヴィンセントを、クロードが止める。
「逃げるなッ!」
逃げるのはやめたようだが、下を向いたまま顔を上げない。
泣き顔を見られたくないのだろうか。
「...何か用か?」
「さっきの事...。」
またもビクリとヴィンセントが震える。
「...まだ何か...言いたいのか?」
「...悪かった。」
「...ッ。」
ハッとヴィンセントが顔を上げる。
涙は流れていなかったが、目は赤くなっていた。
「言い過ぎた。」
「...。」
またヴィンセントは俯いてしまった。
「ヴィンセント?」
「...別に気にしてない。お前の言った事は...正しい。」
「...。」
「気にしても、身体が元に戻るわけじゅないんだ...わかってる...。」
「ヴィンセント...」
「...頭では...わかってる...。わかってるんだ。」
「でも...ライアンはもうあんなに身長が伸びた。ニッキーもニコラウスも...お前も。」
「...ッ!」
「...俺はいつまでこのままなんだろうな。」
「...もしこの身体がリリスのせいなら...俺はちゃんと...死ねるんだろうか。」
「ッ!!」
衝撃だった。
なんて事を自分はヴィンセントに言ったんだろうか。
『悩んでも仕方ない』
なんて無責任な言葉...。
『ちゃんと死ねるんだろうか...。』
そんな事をヴィンセントが考えていたなんて...。
ヴィンセントの言葉を聞いて初めて意識した。
リリスの僕の『オルゴイ』に死は無い。
――――成長しなくなった身体。
もしもリリスの影響から来るものならば、そこに人間としての当たり前の『死』はあるんだろうか。
『死にたくない』と願うのと、『死ねない』というのは違う。
ヴィンセントの身体がずっとこのままだとは決まっていないが、元に戻る保証も...無い。