パラレルSS-T

□止まった時間-始まり-
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はあ...とヴィンセントはため息を吐いた。



自分がバーストしたあの事件から4年が経った。

あれから学生期間も終え、今はプロのエクソシストとして学園に住んでいる。

同期のエクソシスト達も共に学園内で生活していた。






ヴィンセントは自分の両手を眺めまたもため息を吐く。

あの時、バーストをした時の影響で自分の成長は止まってしまっている。
詳しくはわからないが、リリスに触れられた事による影響だろうと学園長は言っていた。


2歳下の弟であるライアンはこの4年でグングンと身長が伸びた。
もう少しでヤーコブに追いついてしまうくらいだ。

自分が弟を守らなければならないのに、その自分には身体も力も無い。
それが堪らなく悔しかった。



コンコン―――



カチャリと音がしてライアンが部屋へ入ってくる。

「兄ちゃん?」


「どうした、ライアン。」

「ご飯だよ。食堂に行こう?」

「ああ、そうだな。気づかなかった。」



ライアンはこっそりと食堂へ向かう用意をするヴィンセントを見た。

ヴィンセントは4年前と殆ど姿が変わっていない。
身長の伸びた今の自分とはかなりの体格差があった。
ヴィンセントはとてもその事を気にしている。
元々室内にいる方が好きだったが、最近は部屋で本を読んでいる事が殆どで。

恐らく、同期のエクソシスト達の成長する姿を見ているのが辛いのだろう。

ニッキーやニコラウスですら、今のヴィンセントの体格を追い越してしまった。

だがライアンは全くと言っていいほど気にしていなかった。

成長は止まっているが兄が頼りになる事は変わらないし、姿がどうであろうと兄は兄だ。
寧ろ身長が伸びた分、自分が兄を守れるのがうれしかった。

しかも、兄は可愛かった。




「ほら、行くぞ。」
「うん!」



食堂への道。
身長差があるので、ライアンはゆっくりと歩く。

黙々と歩いてはいるが、今こうして兄と歩けるのが嬉しい。

「何だ?」

ニコニコと笑顔を見せているライアンを不思議そうに見上げる。



「何でもないよ!僕お腹すいちゃったよ!早く行こうよ、兄ちゃん!」


「うん。」






ヴィンセントもライアンもお互いの気持ちは一緒だ。



―弟を

―兄を





守りたい...。






end.

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