パラレル
□Don't hunt fairy
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Don't hunt fairy
ここは、青春の森。
この雄大な自然の中には、妖精が住んでいた。
妖精には、不思議な力があった。
3回だけ、どんな願いも叶えることができるのだ。
それを知った人間は、妖精を捕まえようと、妖精狩りをするようになった。
運悪く人間に捕まってしまった妖精は無理矢理願いを叶えさせられ、無残な末路を辿るのだった。
今日も、妖精達は狩人から逃れるために必死だった。
森の中をすばしっこく駆け回り、飛んでくるテニスボール(※狩の道具)を避けていく。
しかし、中には動きが鈍く危なっかしい妖精もいた。
「はわっ!!」
「ひいぃ!!」
「ふぇーん!!」
などと言いながら、辛うじて逃げ延びている。
明らかに他の妖精よりものろいにも関わらず、どういうわけかなかなか捕まらない。
狩人はまずその妖精を標的にするのだが、結局は諦めて違う妖精に乗り換えるのだ。
「きゃっ!」
自分の後ろをボールが掠めていき、桜乃は驚いて小さく悲鳴を上げた。
近くの木にぶつかったそれは、草の上を何度かバウンドして静まった。
「あ、危なかったぁ…」
足元の緑色に映える黄色を見ながら、ほっと息をつく。
それもつかの間、新たなテニスボールが飛んできて、桜乃は慌てて駆け出した。
「ふぇーん、捕まりたくないよぉ〜」
恐怖で泣きそうになりながら全力疾走する。
とは言っても、それほど速いわけではなく、生い茂る木々が彼女の身代わりになってくれていなければとっくに人間の餌食になっていた。
「くそっ、なんで当たらねーんだよ!!」
「特別素早いってわけじゃねえのになあ…」
「寧ろ特別のろいんじゃないかな」
「不思議だにゃー」
狩人達は首を傾げるしかなかった。