短編小説

□見えない糸
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「ミックスダブルスぅ〜?!」

素っ頓狂な声を上げたのは、自称テニス歴2年の堀尾聡、12歳。
顧問のスミレがそうだと肯定すれば、そのサル顔を更に似せてみせる。

「毎年恒例行事なんだよ」

くるりと振り返り、レギュラーの1人・2年生の桃城は、可愛い後輩のために説明を付け加えた。
へえ〜と驚きつつも納得する1年生達だが、1人だけ興味なさげに欠伸をする人物がいた。
期待の1年レギュラー・越前リョーマだ。
相変わらずの彼の様子に、スミレは僅かに苦笑した。

「と、いうわけだから、今日の放課後練習は女子テニス部との合同だからね。組決めもあるから、いつもより早く集まるように」

「連絡は以上だ!朝練はこれにて終了!素早くコートを片付け、教室に戻れ!」


毎年9月、中体連が終わった頃に行われる、部活動別男女混合複合試合。
秋に行われる球技大会の種目の一つと言っていい。
青春学園では、男女別に部活動のあるテニス部、バドミントン部、バレー部で、イベントの余興として男女混合試合を行っていた。
バスケットボール部も男子女子とあるが、以前女子の怪我人が多く出たため、対象から外された。

「じゃあさー、俺達も試合に出るってことだろー?」

興奮気味に話すのはやはり堀尾だ。
だが彼を含む馴染みの1年トリオの他の2人も落ち着かない様子だった。

「そうだよね、僕達も試合やるよね!」

「嬉しいけど…何だか不安だなあ」

「何言ってんだよカツオ!試合の展開によっちゃあ、今度のランキング戦に選ばれるかも知れないんだぜ!」

「そうかも知れないけど、僕達にはまだ無理だよ」

「ま、お前らはなー!俺は自信あるぜー?なんてったって…」

テニス歴2年だから、と実のところ自慢になるのかならないのかわからない決め台詞と同時に、休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
2人は何も聞かなかったというふうに自分の席へ戻っていく。
何の反応もなしに教室を出て行く彼らに情けない声を上げる堀尾。
その左斜め前の席に座るリョーマは、はなから話を聞く様子もなく、机に突っ伏して寝ていた。
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