短編小説

□伝えたいこと
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「す、好きなの」

思い切って告白しようと決めて、勇気を振り絞って言った言葉。
両目をぎゅっとつむって、握りしめた両手に力を込めて、じっとその時を待つ。
その先にあるのは喜び……?
それとも、悲しみ……?





伝えたいこと





彼は私がそんなふうに思っていたなんて思ってもみなかったみたい。
驚いた顔をして、らしくなく固まっていた。
そしてどんな心境を示しているのか、頭を掻いて、答えを出した。


答えは、NOだった。


待っていたのは切なさがいっぱい詰まったプレゼントボックス。
どきどきして、ちょっぴりわくわくして開けたそれは、開けるのがまだ早かったみたい。
もう少し、もう少し我慢していたら、もしかしたら甘酸っぱいものに変わっていたかもしれない。
――でも、現実は変わらない。

私はその後、しばらく屋上に佇んで、沈みかけの夕日を見ながら歩いて帰った。
涙は、ひとしずく流れただけだった。
もしかしたら、心のどこかでもう答えを知っていたのかも知れない。
こうなることをわかっていたのかも知れない。
だからこんなに静かな気持ちでいられるのかも知れない。
全部憶測でしかないけれど、そう強く思える。
こんな結果になったけれど、私は満足している。
だって自分の正直な気持ちを、伝えることができたから。
彼に私の気持ちを、知ってもらえたから。
だから私は、後悔してない。
彼のことが、本当に好きだから。
ふられても、嫌いになんてなれないから……。
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