けいおん!

□『8月21日』
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「すみません、このケーキ下さいっ!」

現在21時58分。
私の知る限りで一番遅くまで営業している洋菓子店へ、仕事の疲れも忘れ駆け込んだ。
閉店間際にも関わらず、ショーケースには幾つかホールケーキが残っていて、その中からあいつが一番好きないちごのケーキを選び店員さんに注文する。
息も切れ切れな私の様子に、店員のお姉さんは小さく笑った。

「お誕生日用ですか?」

「はい。」

「お誕生日プレートはこちらからお選び下さい。」

「えっと…これでお願いします。」

「お名前はなんとお書きしましょう?」

「りつ、でお願いします。」

「かしこまりました。少々お待ち下さい。」

店員のお姉さんは手早くプレートに名前を書いて見せてくれた。

「こちらでよろしいでしょうか?」

お誕生日プレートにはチョコレートペンで『りつ』と可愛い字で書かれていて、名前が書かれているだけなのに、なんだか私は少し照れ臭くなってしまい頷く。

「ロウソクは何本お付けしましょう。」

「大きいのを二本と小さいのを五本で。」

「かしこまりました。お持ち帰りのお時間は?」

「30分でお願いします。」

「かしこまりました。もう少々お待ち下さい。」

カラフルなロウソクとケーキ、保冷剤を箱に入れてもらう。
代金を支払い箱を受け取る時、店員のお姉さんは優しく微笑んで、

「大切な人なんですね、『りつ』さんは。」

なんて言うものだから、私は本格的に照れてしまい、逃げるようにして店を出た。



二日ぶりに帰った部屋にはやっぱりと言うか、想像通りの光景が広がっていた。
点けっぱなしのテレビに設定温度が低めのエアコン。
クッションを枕代わりに薄着で転がる愛しいこいつ。

「起きろ律、いくら夏でも風邪ひくぞ?」

机に鞄とケーキの箱を置いて、律の頬をつつく。

「うう…ん、…みお?」

「ただいま、りつ。」

「おかえりー、寂しかったぞー。」

まだ眠りから覚醒しきってないのか、やたら甘い声で抱き着いてくる律は本当に可愛い。
愛しい体温を抱きしめつつこのまま一緒に寝てしまおうかとも考え、あっ、と思い出す。

「りつ、ケーキ買ってきたからお祝いしよ?」

「…今何時?」

「11時53分。まだギリギリ誕生日だよ。」

「そっかぁ。」

律は嬉しそうに笑って、猫のように頬を寄せてくる。

「律、お誕生日おめでとう。」

「へへ…、ありがとう澪。」

重ねた唇は甘くて、ケーキは要らなかったかも、なんて思ってしまった。


Happy Birthday Ritsu!










後書きと言う名の捕捉。
澪→仕事で出張してた。
律→澪待ってて寝てしまった。
っていう感じで。
大人な二人は同棲とかしてます。


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