けいおん!
□『私が風邪をもらった理由』
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―…すぅ…すぅ…すぅ……――
「――ん、ぅ?」
目が覚めるとりっちゃんの寝顔がドアップ。
「っ?!」
一瞬軽くパニックになったけど、すぐに思い出した。
今日は風邪でお休みしたりっちゃんを、軽音部員皆でお見舞いしに来たんだった。
皆でワイワイやってるうちに…いつの間にか私は寝てしまったみたいで。
そういや皆居ないな。…まあいっか。
―…すぅ…すぅ…すぅ……――
今、部屋にはりっちゃんと二人きり。
静かな部屋にりっちゃんの寝息だけが聞こえる。
何となくまだ眠い脳を働かせて、りっちゃんの寝顔をぼんやりと覗き込む。
…何処と無く幸せそうな寝顔。
「…良かったね、りっちゃん。澪ちゃんと仲直り出来て。」
「……ん…」
寝ているのに、まるで起きてるかのような返事が返ってきて、…多分偶然なんだろうけど、なんだかとても嬉しい。
―…すぅ…すぅ……――
りっちゃんの規則正しい寝息。
「ドラムは走り気味なのにね。」
自分で言って可笑しくなる。声を殺して笑ってしまった。
―…すぅ…すぅ…すぅ……――
二人きりの部屋。
一人は寝てしまってる訳で。
段々と暇をもて余した私はりっちゃんの寝顔をじっと見つめた。
りっちゃんの象徴とも言えるおでこ。
長い睫毛。
整った鼻筋。
柔らかそうなほっぺ。
厚くも薄くもない、形の良い唇。
…ドラム叩いてる時はあんなにカッコイイのに、寝ている今はこんなにも可愛い。
―…すぅ…すぅ…――
薄く開かれた唇を見ていたら、なんだか妙に落ち着かなくなってきた。
そして気が付けば、私はりっちゃんの唇に自分の唇を押し当てていた。
柔らかな感触に目眩を覚える。
りっちゃんを堪能して、ゆっくり唇を離す。
胸がどきどきしていたけれど、さっきよりは落ち着いて、なんか心地いい。
目が覚めた時の様にベッドに寄りかかる。
「…りっちゃん、」
―…すぅ…すぅ…――
「…好きだよ―――」
―…すぅ……ぅん…――
一瞬、りっちゃんが笑ったように見えたのは気のせいか私の夢だったのか。
◆
「へっくし!」
「なんだー?今度は唯が風邪かあ?」
誰にも言えない、
『私が風邪をもらった理由。』
(風邪引きりっちゃんとチューしたからだよ。)
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