けいおん!

□聖祐巳
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「ぅわ甘っ」

聖さまの部屋に来る途中、コンビニで買ったアソートチョコ。
その中から聖さまはブラックチョコを取り出して、一口噛るなり、そうおっしゃられた。

「…そんなに甘いですか?」

「甘いよー…最近甘いの採ってなかったから、尚更かなぁ…?」

口直しに、といった感じでマグカップに手を伸ばす。中身はさっき祐巳が淹れたブラックコーヒー。

「チョコは普通、甘い物だと思いますけど…」

「んー、まぁそうだけどね。でも、私は同じブラックなら、コーヒーの方が好きだな」

コーヒーを美味しそうに飲む聖さまを尻目に、祐巳もブラックチョコに手を伸ばす。

(ブラックチョコはずっと昔に一度食べたけど…そんなに甘かったっけ?)

チョコを口にした瞬間、ミルクチョコには無いほろ苦さが口いっぱいに広がった。

「苦っ」

咄嗟に出た祐巳の感想に、聖さまは『やっぱり』と云った風に小さく笑う。

「聖さまの嘘つき。全然甘くないじゃないですかっ」
祐巳の抗議に対して聖さまは、もう一つブラックチョコを口にされた。

「嘘なんかじゃないよ?…ほ〜ら、甘い甘い」

「聖さまの味覚なんか解りませんっ」

「試してみる?」

「…えっ?」

あっという間に抱き寄せられ、祐巳の唇は聖さまの唇で塞がれた。
唇を、歯を、簡単にこじ開けられ、聖さまの舌が祐巳の口内へと侵入してくる。

ブラックチョコを纏った聖さまの舌。
祐巳の舌を舐めあげたり、吸ったり絡めたり。

「…ね、…甘い、…でしょ…?」

口付けの合間に、途切れ途切れ聞かれて…。
もうチョコの味なんか判らなくって。
それでも。
聖さまの声も舌も。
とても甘くて。

「はっ…ぅ、む…」

祐巳は何処までも翻弄されて、返事すら出来ない。

「でも…祐巳ちゃんはもっと甘い、ね…」

その熱を帯びた囁きに。
祐巳はどうしようもなくなってしまった。

「せ、…さま…っ――」

(甘いのはチョコじゃなくて、聖さま自身ですよ?)

聖さまの甘い口付けの雨を受けながら、祐巳は聖さまのシャツを握り締めると、そう心の中で呟いた。


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