小説

□最大にして唯一の理由
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午前四時。
空も段々と夜の色から朝の色に変わり始めた頃、静かな住宅街の中をフラフラとしながら私は一人帰路を歩いていた。




「(あー眠い…)」




気抜いたら今にも瞼はくっ付きそうだし足元はフラフラして覚束無いし、夜勤はやっぱり堪えるわー。そんなことを考えながらアパートの階段を重い足で登り、自室の扉を開いて見れば




「やあ、おかえり」
「…」




私を待っていたのは我が愛しのベット、では無くて恋人の松永さん。前に強奪された合鍵で入ったのだろう、それは問題ではない(いや、不法侵入罪だが)



今問題なのは彼の隣に寝転んでいる女の事だ。



男女がベットの上に居るのだから勿論服は着ていない。恐らく情事の後だ。女は寝転んでいた体を起こして私を一瞥、その眼には優越感が宿っているのはきっと間違いではない。可哀相に、そんな視線を向けられた私が思った事は、たった一つだった。




−嗚呼、またか






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