最後の物語
□ココロ
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貴女を失った悲しみは
息ができないくらい
深い
『ココロ』
“下界”
人間が地獄と、そう呼ぶ場所。
空には紅い月が二つ。小さな角の生えた子鬼、二つの頭を持つ大鷲。
闇だけがそこを埋め尽くし、闇が全ての世界。
そこには、この景色に不釣合いな青年がいた。
彼の名前を火乃(ほの)といった。
その腕には少女が抱かれている。
彼女、加奈は死んでしまった。
純白の羽を持ち、光、とそれしか形容できない輝き、美しさ。
天使だ。
爬虫類的な羽に尖った耳。闇でもある悪魔。
それが彼。
彼女のことを愛していた。二人で過ごした日々は幸せだったはずなのに
全ては自分の所為なのだ。
悪魔と天使は、決して相容れてはならない。
それが掟だった。それを知りながら、彼は天使を愛した。
そして、加奈は殺された。
掟を破った罰だと、そう告げられた。
ならば自分も殺してほしかった。共に死ぬことを選びたかった。
加奈に、会いたかった。
だが、生きることが罰だった。
生きて苦しめと言われた。
最大の
罰だ。