青の祓魔師
□兄と弟
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「奥村君」
クラスの女子に話し掛けられた雪男は、いつもの表向きの笑顔を見せた。
「なんですか?」
「弟さんって、その、彼女とかいるの?」
女子生徒はもじもじと制服のネクタイをいじりながら問う。
「彼女はいませんね。それに燐は忙しいからしばらくは作らないんじゃないかな」
雪男の言葉に一喜一憂した女子生徒はありがとうとだけ言うと自分の席へと戻っていった。
それと同時に雪男の携帯バイブが鳴った。相手先は今しがた話題となった弟であった。
「もしもし?」
『あ、俺、俺!!』
「何?オレオレ詐欺の真似?」
『はぁ?なんだそれ?つーか機嫌悪い?』
声色で雪男の機嫌が分かるのは双子であり、弟であるためか。どちらにしろ燐のいうとおり機嫌が悪いのには変わりなかった。
「それよりどうしたの?」
『あ、そうだった!!今日塾の鍵わすれてさ…一緒に行こうぜ』
「はぁー…」
急ぎの用事かと思えばと雪男はため息の後に付け足した。
『仕方ないだろ〜兄ちゃん、いつホームルーム終わるかわかんねぇし』
「しょうがないな」
『終わったら俺が行くから教室で待ってろよ』
雪男は返事をしようとするも一旦、考えた。
この教室に燐が来たらどうなるのかを。
絶対に今みたいな女子生徒が増えるに違いない。
それは許せない。
「いや、僕が行くよ。だから待ってて」
『優しいな、兄ちゃん』
雪男は携帯の向こう側で身震いしている燐の姿が想像できた。
『じゃーな』
「あ、待って、燐!!」
『ん?』
「好きだよ」
『はぁ?何言ってんだ!!バカ兄貴!!』
照れ隠しのため勢いよく切られた通話。雪男は携帯の向こうにいる燐を想像しながら小さく笑った。
ふと周りの視線が気になり見渡すと、女子達がきゃーきゃーと騒いでいた。
そして聞こえてくる言葉は奥村くんに彼女がいるという話し声。
雪男は誤解を解くのも面倒だと思い、しばらく黙っていることにした。
end