青の祓魔師
□この黒い感情
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「若先生!!大変なんです」
志摩廉造から連絡を受けて15分後、雪男は学園前まで来ていた。
「一体どうしたんですか?」
電話越しの切羽詰まった声とは違い、雪男の目の前にいる志摩の顔はいきいきとしていた。
「手間を取らせてすんません。でも若先生にしか頼めへんのですよ」
確かにいつものメンバーはおらず、志摩ただ一人であった。
「若先生はそばにおるだけでいいんです」
その言葉に雪男は違和感を覚えた。数日前、志摩から燐に連絡があったのを思い出した。
雪男ははっきりとしたやり取りは知らなかったが、電話を切った燐が再びスクエアを読み直していた。
その行動で重要な内容ではなかったと感じ取られた。そして燐はどーせ虫関係だろと言ったのを雪男は思い出した。
燐に志摩からこのような連絡があるのは一度や二度ではなかった。
そして、今回、雪男は初めて自分に回ってきたのだと思っていた。
「はぁー」
「そんな溜め息つかんといて下さい。決して悪いことと違いますからぁ」
生徒の一大事と思って駆け付けたが、構えるほどの大事ではなかったと雪男は脱力した。
「で?どこです?虫は」
「虫?」
「虫が怖くて動けないんじゃないんですか?」
「あぁ…今回はちゃいますよ」
とにかく着いてきて下さいと志摩はある場所まで雪男を案内した。
案内されて20分後、着いた先はチェーン店のファミリーレストランであった。
「なぜここに?」
「話は中に入ってからにしましょーか、若先生」
雪男は背中を押され中に入った。
するとすかさず店員は2名様ですか?と尋ねてきたが、志摩がツレが先に来てますと言うと志摩を前にし目的のテーブルへと向かった。
「おまっとうさん!!」
「やっと来たー」
「いらっしゃい、奥村君」
「私服姿、ラフなのにカッコいい」
そのテーブルには、片方の長椅子に女子3人が固まって座っていた。
「志摩君、これはどういうことですか?」
雪男は女子達に笑顔を向けてながら隣にいる志摩に伝わるほど殺気を込めて質問した。
それを感じた志摩は冷や汗を流した。
「こうでもしないと若先生来てくれんやないですか」
これは俗にいう合コンであった。女子達に雪男を連れてくるように約束した志摩はこうするしかなかったのだ。
「い、一時間だけでも!!この通りッ」
志摩の頭を下げた姿に溜め息をつくと、今更女子を前にして帰れないと雪男は観念した。
「一時間だけですよ」