青の祓魔師

□顔も見たくない
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燐はいつもの如く、寮の屋上で蝋燭に炎を灯す修行をしていた。

「ふぬー!!」

額に汗をかきながら、両手を前に伸ばして試みるが、灯すというより燃やすに近い状態であった。

「だぁぁあ!!」

隣で寝ていたクロもびっくりして起き上がった。

「(びっくりしたぁ…だいじょうぶか?りんー)」

「わりぃ。起こしちまったなクロ」

クロの頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めた。
燐も集中力が切れたのか、燃え続ける炎を消すことも億劫となっていた。

「(おなかすいたー)」

クロの言葉に携帯電話を見ると、時刻は朝の5時を指していた。

深夜0時を過ぎても眠れなくて始めた修行もすでに5時間も経っていた。
ちょうど使える蝋燭も残っていなかった。

飯にするかと聖水を片手にクロへ言った。

「(わーい!!はやく!!はやく!!)」

「こら、慌てんなって」

全部を消し終えると、燐とクロは厨房へと急いだ。




燐は雪男とクロの分だけを作ると部屋に戻った。
戻る途中、雪男とすれ違い呼び止められたが燐は聞こえないふりをした。

雪男も大して気に止めず食堂へ向かった。


燐がベッドに横になって30分が経った頃、雪男が戻ってきた。
そんな雪男はベッドに横たわる燐に向けて言葉をかけた。


「兄さん、どうかしたの?」

雪男に背を向けてた状態であり、燐が寝ているか起きているか確認できなかった。

「…………」

「兄さん?」

「…………」

「学校遅刻するよ?」

「……いい」

こっちに来てからは理由なく学校をサボる燐ではなかったため、学校に行かないと露にした燐に雪男は違和感を感じた。

「何かあった?」

「何でもねーよ。体調悪いだけ」

「どこが悪いの?というかいい加減こっち見たら?」

燐は寝返りを打つが仰向けであり、未だに雪男を見ようとしなかった。
一応自分の言葉を受け入れてくれたと雪男はほっと安心した。

「どこが悪いの?」

もう一度同じ言葉をかける。これは雪男が本当に心配しているからであった。

「どこだっていいだろ…つーか早く学校行けよ。優等生様」

燐は皮肉たっぷりに言った。何が原因なのか分からないが、燐がイライラしていることは十分雪男に伝わった。

「何イラついてるの?」

「イラついてなんかねーよ!!」

燐が叫ぶと同時に、ボッと一瞬だけ布団からはみ出た尻尾の先が青く光った。

「さっさとどっか行っちまえ!!」

本格的にふてくされた燐は頭から布団を被った。

お前の顔なんか見たくない、そう言われたような態度をとられ雪男も不愉快な気分を隠せなかった。

「勝手にしろ!!」

雪男はそう吐き捨てると部屋を出ていった。

部屋を出てからしばらくして燐も布団から顔を出したのだ。

そして自己嫌悪に陥る。

「なにやってんだ…俺」

完全に燐の八つ当たりで始まった兄弟喧嘩。

修行が上手くいかないときに限って思い出されるのは出来た弟の評価。

今さら比べってしょうがないと、頭ではわかっているのだが、燐の心は着いていけてなかったのだ。

だから、つい雪男に当たってしまったのであった。

しかし雪男にとってはいい迷惑。
燐が苛立つ原因が自分だと思うわけがない。

咄嗟に出た“どっか行っちまえ”だって言葉の文だった。
本当にどこかへ行かれたら困るのは燐自信なのに。

「弁当作って謝りに行くか…」

そうと決まれば燐はベッドから降りると厨房へ行った。

謝ろう。謝ったら雪男だって許してくれると期待を胸に。








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