小説

□謎の人4 05.10.30
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 ギシリとベッドの軋む音で勝利は目を覚ました。

「……う…」

 うっすらと目を開けた瞬間、飛び込んできた黒い瞳。
「目が覚めた?」
 心配そうな村田の顔に、勝利は自分が意識をなくしていたことを知った。
「俺っ」
 ガバリと起き上がった瞬間、鈍い痛みが走った。
「あっつ…」
「駄目だよ急に起きちゃ」
 顔を顰めた勝利を、ベッドに腰掛けていた村田が優しく寝かしつけようとする。首を振って勝利が辺りを見回すと、枕元の時計が目に入った。針は十一時過ぎを指していた。ここに来たのは夕方だったのに、もうかなりの時間が経ってしまったらしい。
 時計の横にあった眼鏡をかけていると、村田がコップを差し出した。
「はいこれ飲んで。スポーツドリンクだよ、水分補給しないとね。かなり体液消費しちゃったからさ」
「たっ体液って〜〜なんてことを言うんだよっ!!」
「だって事実じゃないか。ほらちゃんと飲んで、なんなら口移しで飲ませてあげようか?」
「い、いいっ、自分で飲むからいいっ」
 にじり寄って来た村田から慌ててコップを引ったくると、勝利は一気に中身を飲み干した。
「ちえっ残念。おかわりは?」
「……ああ」
 本当に残念そうな村田に引きつりながらコップを差し出すと、ペットボトルからもう一杯注いでくれる。

 視線を落とすと自分の体が目に入る。裸のままだったが、綺麗に拭き清められてあった。それに感心するやら恥かしいやら。

「……なあ…」
「ん?」
 視線を上げられずに勝利は気になっていたことを訊ねた。
「親御さんは? もう帰ってきたのか?」
「うん?」
「俺のことはなんて説明したんだ?」
 不安げな勝利に、首を傾げる村田。
「……その…息子の部屋に、裸の、男が寝てたら…ショックじゃ…」
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