★みじかいほん★
□曼珠沙華の咲く頃に…
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またあの華が咲く季節が廻ってきた
紅い紅い曼珠沙華
この華を見るたび思い出してしまう彼の記憶
黄泉の屍鬼にとりこまれ命を失った最愛のヒト
もうその姿を見ることも、声を聞くことも叶わない
「なあ騰蛇、またあの華が咲いたよ。」
都から離れた山の中、一人呟いた言葉に返ってくる声はない
「よくここに二人で来たな。」
頭上には見事に紅葉した紅葉の葉、足元には紅々と咲き誇る曼珠沙華の華
この季節にこの風景を二人で見るのが当たり前だった
「ずっと一緒だと誓ったのにな…」
いつも傍にいることが当たり前だった
何があっても離れないと誓ったのに、
しかしその約束はこんなにも簡単になくなってしまったのだ
十二神将は不死身ではない
わかっていた…
だが、こんなカタチで思い知らされるなんて思わなかった