Sweet-hony
□止まない雨 *短篇*
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雨の中 ある場所に沢山の人が集まった 充は木の陰にたたずみ傘をさしながら、一通りを眺めていた 中に居た男が充に気付き、中から傘をさして傍へとやってくる 「…入らないのか?充…濡れるぞ」
黒い服を来た兄が充の濡れた肩を見て呟いた 「……俺は此処でいい…」
「……充」
霧雨が二人を包む
俺は兄と目を合わさず、偏にある場所を見つめていた それに気付き、兄は言葉にならない溜息のようなものをはいた
「……風邪をひかない内に家に帰るんだよ」
そう言って自分の居た場所へと戻っていった それから俺は空を見上げた 先程から止まない雨 霧で周りが霞む 「今日は…満月だってのに…」
この雨の所為で何も見えない いや…… 俺の目には… 見えないだけだったのかもしれない…… 『……は…っも……み…るよ』
あの人の言葉が俺の頭をよぎる そして俺は傘を深くして、この場所を後にした