Sweet-hony

□止まない雨 *短篇*
2ページ/12ページ

雨の中                                 ある場所に沢山の人が集まった                                  充は木の陰にたたずみ傘をさしながら、一通りを眺めていた                                 中に居た男が充に気付き、中から傘をさして傍へとやってくる                                「…入らないのか?充…濡れるぞ」
            黒い服を来た兄が充の濡れた肩を見て呟いた                「……俺は此処でいい…」
            「……充」
            霧雨が二人を包む
                        俺は兄と目を合わさず、偏にある場所を見つめていた                        それに気付き、兄は言葉にならない溜息のようなものをはいた
                        「……風邪をひかない内に家に帰るんだよ」
            そう言って自分の居た場所へと戻っていった                                        それから俺は空を見上げた                        先程から止まない雨                           霧で周りが霞む                             「今日は…満月だってのに…」
                        この雨の所為で何も見えない                                   いや……                                俺の目には…                                          見えないだけだったのかもしれない……                                          『……は…っも……み…るよ』
                        あの人の言葉が俺の頭をよぎる                                              そして俺は傘を深くして、この場所を後にした
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ