月夜に乾杯シリーズ
□月夜に乾杯〜三話
1ページ/8ページ
プロローグ
秋の夜空にぽっかり浮かぶ満月。
何処からか遠吠えが聞こえてくる……
哀しげに、切なげに。
聞く者を郷愁へと誘う……
広いだけが取り柄の、古びた洋館に四人の男女が思い思いに寛いで居た。
「一狼さん……暫くは帰って来ませんね」
そう言ったのは、雪の様に白い肌の美形の男、雪彦である。
話し掛けられた男は真っ赤な髪で彫りの深い顔立ちをし、スマートな身のこなしのレッドが、
「ああ、朝まではな……」
「ねぇ、ミハイルちゃん。お茶入れてくる?」
元気ハツラツ脳天気少女のかんなが、暇つぶしにミハイルいぢりを始めた。
「娘! お前の入れたお茶など絶対飲まないからな!」
かんなの言葉に顔を赤くし、必死に抗議するミハイル。見た目は四十がらみの渋いイケメンだが、かなりの年よりである。
そう……知ってる人も居るかも知れないが、此処の住人は普通の人間では無い。