月夜に乾杯シリーズ

□月夜に乾杯〜三話
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 プロローグ

 秋の夜空にぽっかり浮かぶ満月。
 何処からか遠吠えが聞こえてくる……
 哀しげに、切なげに。
 聞く者を郷愁へと誘う……

 広いだけが取り柄の、古びた洋館に四人の男女が思い思いに寛いで居た。

「一狼さん……暫くは帰って来ませんね」

 そう言ったのは、雪の様に白い肌の美形の男、雪彦である。
 話し掛けられた男は真っ赤な髪で彫りの深い顔立ちをし、スマートな身のこなしのレッドが、

「ああ、朝まではな……」

「ねぇ、ミハイルちゃん。お茶入れてくる?」

 元気ハツラツ脳天気少女のかんなが、暇つぶしにミハイルいぢりを始めた。

「娘! お前の入れたお茶など絶対飲まないからな!」
 かんなの言葉に顔を赤くし、必死に抗議するミハイル。見た目は四十がらみの渋いイケメンだが、かなりの年よりである。


 そう……知ってる人も居るかも知れないが、此処の住人は普通の人間では無い。
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