置き詩

▼書込み 

04/06(Wed) 18:24
万朶、降り注ぐ
宇佐 世白

朝焼けの
山端の上を見る
春、間近の箱庭の中
目指せる重畳の在り処も
今は何も頭には無い

扉の向こう側で
雨風が緩やかに吹く
冽たい床に
踏み込んだ足が
まるで土が湮む樣にして
弛んだ気がして
噫乎、わたしは情けない

今わたしの隣で
呼吸を続けているだろう
得手勝手為る生命は
今わたしの傍らで
手を振る真似をする

綺麗なものは
信じられないのだろう
美しいものを
ただ純粋に美しいと
わたしは何故、言えない

芽吹く莟が偶然の樣に
季節を辿っては万朶と
響みて肩に孰れ降るのだろう

万朶の桜
噫乎、いまこそ
空へ彷徨いたまえ


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