飴玉

ふと、甘い香りが鼻腔をくすぐった。

「……レイン?」

辺りを見回すまでもなく、今現在執務室内にいるのはリゼとレインの二人だけである。

小さな子供が好みそうな砂糖菓子の甘い香りが漂ってきた事に怪訝な表情となった青銀の青年は、ペンを操る手を止めて金の青年へと視線を向けた。

「ん?リゼも食べる?」

言いながら、小さな白い陶製の器から己の髪の色によく似た黄金の飴玉を摘み上げた。

「そうではなくて、そんなの持っていたか?」

不思議そうに問われ、一度飴玉を器の中に戻すと、女官に貰ったのだと返す。

そうかと頷き、疑問が解けて興味を失ったのか、また視線を書類に落とした青年に、レインは少々詰まらなそうに眉根を寄せた。

しかし何か閃いたのか、直ぐに表情を戻して立ち上がり、上司たる青年の座る場所へ足を向けた。

「…何だ?」

机の前に立ったレインに再度顔を上げれば、目の前に黄金色の飴玉を摘んだ指が差し出された。

「頭使う仕事の時は糖分の補給がいいんだってさ」

「知ってる」

「じゃあ、はい」

にこにこと笑みながら差し出す様子に、受け取らなければ引き下がらないだろうな、と溜息を吐いた。

「…有り難く貰おう」

「うん。…て、え、ちょ、り、ぜ…?!」

飴玉を摘んでいた手の首を掴まれ、疑問に声を上げる間もあらばこそ、金の青年は青銀の青年の行動に動きと言葉を止めた。

薄く形の良い唇が開き、飴玉を摘んだ指先が温かな咥内へと消える。

柔らかい舌が指先を擽り、飴玉を捕らえて離れていった。

「ん、甘いな」

そう一言漏らし、リゼは書類に視線を戻した。

そのまま金の青年は、やってきた朱の青年が話しかけるまで、その場に固まって居たそうな。

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隊長は天然です(笑)

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