書架
□予兆
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一人は、白銀の髪に深い湖底のような碧く切れ長の瞳に透き通るような色白の肌の持ち主。
人形のように整った容貌だが、惜しいことに眉間に皺が寄ってしまっている。
もう一人はこの部屋の一番中央奥に位置する机─この執務室の主であり、騎士達の筆頭の席である─に座っている青銀の髪の青年だ。
きめ細かい肌は透き通るような白で、その顔の右半分は艶やかな青銀で隠れているが、右の瞳が金緑、左の瞳が銀紫という、とても希有な色を持つ青年である。
繊細な細工のようなその容色から、『ティファレトの宝玉』とまで呼ばれているが、本人は己の容姿が優れているという自覚は無いようでもある。
銀の青年と違い、常と変わらぬ凛とした様子で書類を捌く隊長は、恐らく……
「…また、徹夜で仕事してましたね?」
多少低い声に、青銀の青年の肩がビクリと小さく跳ねた。
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