書架
□静寂と恐慌と
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リゼ達一行が山間の町を目指していた頃、城には不気味な噂が舞い込んで来ていた。
いわく、皇都の北街道の先、アノーレの森の中にいつの間にか大きな館が建っている。
昼でも暗いその館からは、夜な夜な悲鳴やら何やらが聞こえてくる。
そして、肝試しに向かった若者が戻って来ない等々…
「まぁ、典型的なお化け屋敷だな」
「今までそんな話、聞いたこと無かったけど…」
「どうやら、最近になって人の口に上り出したようだからな」
やれやれとばかりに肩を竦めたキールは、どかりとソファーに腰掛け、テーブルの上に広げられた皇都周辺の地図の一部に丸を書き加えた。
ホラーハウス(仮)と、可愛いお化けの絵が描き込まれていたりするが、誰が描いたのかは誰も突っ込まずにいた。
因みにこの地図、一応近衛の備品だったりする。
「で、たった数日で噂が広まりまくってしかも尾鰭が付きまくって、子供が怖がったり遊びに行こうとしたりするから何とかしてくれってさ」
ぽいと投げるようにペンをペン立てに入れ、キールはやれやれと言わんばかりに溜息を吐く。
地図を見ていたジークが、眉間に皺を寄せて口を開いた。
「何でそれが近衛の方に回ってくるんですか?そういうのは第二師団か第三師団の方が得意でしょうに」
「まぁ、そうなんだけどな」
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