書架

□奪還する!
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微かな光すらない真闇のなか、青年は独り、立ち尽くしていた。

(ここは…)

辺りを見回し、思わず呟いてみて、青年は驚きに目を見開いた。

(…どういう事だ?)

確かに口に出したはずの声は音にならず、長く此処に居たら気が狂うのではないかと思う程、何の音も届かぬ静寂のみが耳を突く。

いや、気づいてみると、実際に己が口を動かしたのかどころか、ちゃんと立っているのかさえ曖昧に思えてくる。

常人ならば混乱に陥ってしまいそうな黒一色に塗り潰された世界の中、青年は闇の奥を見透かそうと意識の上で目を細める。




───微かに、闇が動いた気がした。

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