書架
□皇都の平和な一日
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リゼラード、レイナード、ライルの三名が城から旅立った翌日のこと。
近衛騎士が詰める執務室では、ちょっとした騒動が起きていた。
「殿下がまたいない、ですって?」
「ああ。今朝、侍女が洗面用の水を持って行った時には、もぬけの殻になっていたそうだ」
眉間に皺を刻んだジークの問いに、溜息を吐きながら濃い茶の髪に深蒼色の瞳の青年が答えた。
「…警備の者は何をしていたんだ?」
黙々と書類を処理していたヴェルスが手を止めて顔をあげると、濃茶の髪の青年は肩を竦めてみせる。
「皇子殿下は窓から外にお出になられたらしくな、気づかなかったそうだ」
「職務怠慢だな」
スパッと言い切り、ヴェルスはまた書類に視線を落とした。
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