回る…廻る…、風車はまわる…。
火に抱かれて、回る廻る……。
あの時、緋を抱いた風車は、彼らをただただ見つめるだけだった。
そう……物語を集める人形のように。
だが、彼女は降り立った。
少年と少女の元に降り立った。
「こっちよ!」
熱さを感じる。
脚の感覚は消えた。
恐怖を感じる。
安心感など消えた、消え失せた。
「! そこの茂みに隠れなさい!」
少年と少女をしゃがませ、庇うように上から抱き締める。
「……様子を見てくるわ。ここで待ってなさい。じっとしてたら大丈夫よ」
緊張を孕んだ声で呟き、彼女は立ち上がる。
その時だった。
矢が彼女の胸を貫いたのは。
少女の小さな体が宙に浮かんだのは。
「…ッ…逃、げて」
立ち竦む少年に向かって、彼女は声を絞り出した。
「逃げて!サン!」
逃げ出す少年。
その後ろ姿を見つめながら、少女も叫ぶ。
「……――て…サン…!」
闇に消え入る意識の中に響いたのは、少女の悲鳴。
闇に呑まれる視界の中に映ったのは、怯え縋るような少女の瞳。
「…ごめんね………」
そして彼女は、幾度目かの死を迎えることとなる。
緋色の風車
.