倉庫
□衝突
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(うわあ最悪。)
暗闇の中、それでも輝く金の髪を見ながら、アキラは思った。
二人っきりで、閉じ込められた。
*
山道を歩いていると、「鬼目の狂」を倒すべく現れた集団が、いきなり襲い掛かってきた。
そんな事は珍しくもないのだが、そいつらは「みぶいちぞく」とか言う奴らで、結構手ごわかった。
その中の一人が、一瞬で他人の足元に穴を開けるという変な能力を持っていて、避ける間もなく落ちてしまったのだ。
落ちてしばらくは、気を失っていたらしい。
眼を開けると、すぐそばに見慣れた金色が見えのだ。
自分が無事だったのだから、ほたるに限って怪我などはしていないだろうが、一応駆け寄ってみる。
肩が上下するのを確認して安堵する。
その次の瞬間、穏やかな寝息を耳にしてアキラは眉を吊り上げた。
「って言うかなんで寝てんだよ!!
起きろ!!」
「ヤダ・・・」
「おーきーろー!!
今の状況分かってんのかよ!!
ここ、地下だぞ!!」
さっきあの「みぶいちぞく」に落とされただろうが!!
必死で言い募ると、ほたるはようやくゆっくりと身を起こした。
「アイツ、むかつく」
金色の眼がぼんやりとアキラを見た。
人差し指をアキラに向ける。
何のつもりか分からずただ指先を眼で追っていると、ほたるは指を上下に動かした。
「やーいのろまー、のろまー」
「お前も一緒の立場だろ!!
むしろ俺の方が先起きたんだからな!!」
アキラの怒声には全く動じず、ほたるは辺りを見回した。
「そういえば、狂も梵ちゃんもいないみたいだね」
「そんなのとっくに確認ずみだっ」
反射的に言い返す。
「ここには俺たちしかいねーんだよ!!」
そう、他には誰もいない。
アキラは自らの台詞で、唐突に、自分達が二人きりで得体の知れない空間に閉じ込められた事を理解した。
こんなわけの分からない場所で。
こんなわけの分からない男と。
ふたり。
アキラは思わずがっくりと地面に手を着いた。
どうせ二人きりなら、狂が良かったのに!!
この際、梵天丸でも妥協する!!
心の中で思い切り叫ぶ。
しかし、その思いを受け取る物は誰もいなかった。
運命のいたずらを、アキラはひたすら恨んだ。
*
しばらく打ちひしがれていたが、アキラは思考を切り替えた。
嘆いていても状況を変えることなどできない。
さし当たっての問題は、周囲が暗くて何も見えないことだ。
「とりあえず、火つけろよ」
「ん」
ほたるは刀の先に火を生み出した。
瞬く間に周囲が明るくなる。
アキラは息を呑んでそれを見ていた。
(こいつ、すごい)
何もないところから炎を生み出す姿に、圧倒される。
「何か燃やすものない?」
このままはちょっと面倒くさいんだけど。
ほたるがのんびりと言った。
「あ、ああ」
我に返り、辺りを見渡す。
漸くなじんできた眼に映ったのは、白い壁。
そして、大きな柱。
アキラは眼を見開いた。
「何だここ・・・?」
「何かお城っぽいよね」
「ああ、確かに。
ッてお前何でそんなに落ち着いてんだよ!!
落ちたら城っぽいところにいるっておかしーだろ!!」
「そう?」
「お前的にはふつーなのか?!」
「ちがう、かも?」
「違うんだよ!!」
怒鳴りすぎて喉が痛い。
アキラは肩で息をついた。
コイツをまともに相手にしてたら神経も体力も持たない。
しみじみとため息をつくと、ほたるが近づいていた。
突然の行動に呆気にとられていると、軽く頭を撫でられる。
「大丈夫?」
「お前に言われたくねー!!」
叫びながら、アキラは己の不運を再確認した。