倉庫

□衝突
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「アキラが青いってどういう意味だよ?」

 唐突なほたるの質問に、梵天丸は首をひねった。

「青いっていやー眼の事か?
 確かに、あんな色は見たことねーけどよ。 
 おめーだって相当換わった眼の色してるだろ?」

 ほたるは首を振った。

「眼じゃなくて、お尻」

「オシリ…?」

 一瞬言われた意味がわからなくて眼を丸くする。
 頭の中で理解した瞬間はじけるように爆笑した。


「だッはっっはははッ」

 地面に手を着いて何度もたたく。
 その怪力が生み出す振動に、抵抗することなくほたるは揺れた。

 ひとしきり、梵天丸の爆笑を表情を変えずにじっと見つめていた。
 やっと気が済んだ梵天丸は、目じりに浮かんだ涙をぬぐいながら、ほたるを見た。


「お前、子供で尻が青いヤツ見たことねーのか?」

「ない」

 あんまり覚えてないけど。
 少なくとも、壬生の世界には、そんな子供はいなかった。
 生まれた時から完全な形で、美しく生まれてくるのが常だから。

「そうか。
 この辺のガキだと珍しい事でもねーんだけどよ」

 梵天丸が人の悪い笑みを浮かべた。

「蒙古斑って言って、たまにガキで尻が青くなるヤツがいんだよ。
 大人になったら、消えるもんなんだけどな」

 ガキの証拠って事だ。

 
 そこまで話して足元の布団で寝息を立てるアキラを見た。
 相変わらず良く眠っていて、起きる様子はない。

「コイツは特に色が白いから目立つんだよ」

 それで、結構一丁前に気にしてやがるんだけどよ。
 
「ふうん、分かった。
 ありがと」

 素直に礼を言うほたるに、梵天丸は胡乱気な視線を向けた。

「お前、それ本人に向かって聞いたりしなかっただろうな?」

「しなかったよ。
 っていうか忘れてた」

「絶対!!!アイツに聞くなよ。
 怒りまくるから」

「分かった」




 そして、梵天丸の言いつけをほたるが守れるはずもなく。
 ほたるは何度となくアキラを怒らせる事となった。





「アイツの蒙古斑がなくなったら花街に連れてってやろうと思うんだけどよ。
 いつの話になるかね〜」

「……ずっと先な気がする」


 ほたるの勘は、外れることはなかった。










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