倉庫

□衝突
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 その碧い眼は、澄みきった空の青よりほんの少しだけ柔らかい色をしていた。



 始めてあった時、まず、その目の色に驚いた。
 壬生の世界にはない色。

 心のどこかが騒いだけれど、自分の気持ちがうまく整理できなかった。
 
 鬼目の狂を監視するように言われて、なんだか面白そうだったから従う振りをした。
 鬼目の狂を見張り報告するなんて面倒なことは、最初からする気はない。
 上からの命令は無視して、この世で一番強いと言われる男に勝負を挑んでやるつもりだった。

 しかし。



「あんたが、鬼目のキョウ?」

「…誰だそれ」

 戦場の真っ只中。
 目標らしき人物に声を掛けてみたものの、間違えてしまったらしい。
 相手は顔を真っ赤にして怒っていた。

 
「我は美津之守栄次郎!!
 武士の名を違えるなど、無礼千万!!!
 切り捨ててくれる!!」

 みずのもり?
 ほたるは小さくつぶやいた。

「みず、嫌い」

 襲い掛かってくる男の刀を片手で受け止める。
 
「魔皇焔」

 その場で瞬時に焼き払った。




「俺様を捜してるのはお前か?」

「!!」

 いきなり掛けられた声に、ほたるは身構えた。
 気配には敏感なはずなのに、全く気がつかなかった。
 黒の長髪に、不適に輝く紅の眼。

「鬼目のキョウ?」

 男はニヤニヤ笑っているだけで答えない。



「お前、面白いな。
 俺達と一緒に来るか?」


 ただ一言、それだけを言った。



「うん」



 何も考えず頷いた。
 壬生側の指令も、自分の当初の目的も忘れていた。
 直感の命ずるままに行動した。



 そして、鬼目の狂に付いていった矢先に、青い眼の子供に出会った。
 
 壬生では見ない、美しい自然の色。
 強い生気にきらきら輝いていた。

 それを見たときに、どこか胸が騒いだような気がした。
 それを、うっとうしいと感じた。
 そんな感情は強くなるのに必要ないから。


 だから、ほたるはあの子供が気に入らなかった。







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