倉庫

□衝突
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「私の美しいぃ顔を忘れるなんて、美的センスのない奴がいた物だ」

 二人のやり取りを聞いていた男が顔をしかめた。
 アキラが向き直って男を睨んだ。

「お前の顔なんてどうでもいいんだよ!!
 このわけわかんない場所から出しやがれ!!」

「そうそう」

「…お前のような小汚い人間のガキどもには私の美しさが理解できないようですね」

 男はわざとらしくため息をつきながら、アキラとほたるを見た。
 そして、次の瞬間怪訝そうな顔をし、僅かに目を見開いた。 
 その眼差しは、間違いなくほたるに向けられている。
 怪訝に思ってアキラもほたるを見た。

 男が小さくつぶやいた。

「お前は、確かゴヨウ…」

「!!」

 ごう、と言う音と共に男は一瞬で炎に包まれた。
 火の勢いの強さに、火の粉が広範囲に飛び散る。
 アキラはとっさに腕で顔をかばった。

「勢い強すぎるんだよ!!」

 文句を言いながら顔を上げて、愕然とした。
 男の姿が跡形もなく消えていたのだ。
 
「どこ行ったんだよあいつ」

 アキラは身構えつつほたるに聞いた。

「わかんない」

「わかんないってどう言うことだよ!!
 燃やしたのお前だろ」

「だって、あれ幻影だったし。
 本体はどこにいるか知らない」

 アキラは目を見開いた。

「あれ、偽もんだったのか?」

「そう」

 当たり前のように頷く。
 アキラは全く気づくことが出来なかったのに。

 能力の差を見せ付けられて、悔しくなる。
 けれど、今はそんなことを考えてもしょうがない。

「っていうか、お前、幻影かどうかはおいといて、なんでこっから出る方法とか聞いとかなかったんだよ」

「アイツむかついたし」

「ちょっとは考えろ〜!!」

 アキラは頭を抱えた。
 
 そういえば、この前梵天丸が人はそれぞれ「かんにんぶくろ」というものを持っていると言っていた。
 あんまり腹が立つことがあるとその袋の緒が切れてしまうらしい。

 かんにんぶくろが100個くらいあっても足りなさそうな気がした。



 腹が立ちすぎて何を言えばいいのか思いつかない。

(なんかもっとこう、俺はムカついてんだぞって事を一言で言い表せるよな言葉とかないのかな)

 いろいろ頭の中で考えているうちに、ほたるが一人進んでいることに気づいた。

「おまえ、勝手にどこ行くんだよ!!」

 ほたるが立ち止まる。
 くるりと振り返った。

「本物探しに行く」

「さっきの幻影の、本物?
 本物見つけたらなんかいいことあるのか?」

「うん。
 ここは、あの男が作り出した空間みたいだし。
 地面の下にいきなり異空間をつくりだしから、穴に落ちたみたいに見えたんだと思う」

「空間って」

 突然難しげな事を話し始めたほたるに、アキラは顔をしかめた。

「つまり、俺らはアイツが作った変な空間に入れられたってことかよ?」

「そう。
 空間を作った本人を倒せば、元の場所に戻れると思う」

「なるほどー!!
 お前物知りだな」

 思わず感心して手を打つ。
 次の瞬間に疑問がわいた。

「でもそれ、何で今まで言わなかったんだ?」

「忘れてたから」

「何でだよッ」

 怒鳴ると、ほたるが少しだけ眼を細めた。

「うるさいし、ウザイ」

「だ〜!!すんげームカつく!!
 いっとくけど、俺、お前の事なんか大嫌いなんだからな!!」

「俺もお前みたいな子供キライ」

「子供っていうな!!」

 睨みつけると、金色の温度のない眼がこちらを見た。


「俺は独りで行く。
 お前は勝手にすれば?」

 アキラは驚きに息を呑んだ。

「ひとりで行く?
 そんなの効率悪いだろ。
 協力したほうが絶対早いぞ」

「俺は独りで強くなるから。
 誰かと行動したりしない」

 ひやりとするほど冷たい視線、冷たい声を浴びて、思わずアキラはたじろいだ。








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