小説

□クリスタル
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「・・・全く君は」

 ロイはため息をついた。

「弟だって大概汚い物を見てきているだろうに」

「そうだ。
 でも、新しいあいつにはそんな物いらない。
 そう思わないか?」

「さあ・・・。
 それを決めるのは、アルフォンス君自身であるべきだと思うけれどね」

「そんなの選ばせたら、アイツは楽じゃない方を選ぶに決まってる」

 どこまでもやさしい。
 どこまでも、純粋な人間だから。

「アイツは汚い物を見たって汚れたりはしない。
 そんな事は分かってるんだ。

 だから、綺麗な物だけを見せたいのは俺のエゴだ」



 これまで、アイツには償え切れないほどの罪を犯した。
 だからせめて、自分ができることをしてやりたい。


「練成がかなったら、アイツは幸せになるんだ。
 オレのいないところで。
 オレがいなければ、きっとアイツは幸せになれる」

「・・・そうかな」

「大佐がどう思うかなんてどうでもいいんだよ。
 オレはあんたを、あんたはオレを利用したら良い。
 あんたが、結構甘い人間だってオレは知ってる。
 それを、オレは利用してるんだ」

 だから、遠慮せず俺を使えば良い。


 ロイは目を閉じた。
 

「分かった。
 適当な場所を一週間以内に見つけておこう。
 見つかり次第連絡する」


「感謝する」

 エドワードは微笑んだ。
 数歩前に出て、ふわりと両手を大佐の肩にかける。

 額に唇を落とした。


「あんたに、幸福がありますように」



 あっけに取られている男を残して、金色の少年は音もなく部屋を去った。









******後書き
 ロイエドではありません!
 恐らく続きます・・・(希望的観測)
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