短編

□魔王に質問
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「あのさ、周助ってどうして意地悪になったんスか?」

部活がやっと終わり、着替えをし終えた部員達が部室からぞろぞろと出ていく中、レギュラーメンバーで1番目と2番目に背が低い2人だけが未だ残っていた。
丁度不二と2人きりになった越前は背中を向けて着替えながら恋人に訊ねた。
越前が常々訊こうと思っていた事である。
不二はそれを聴くと、脱ぎかけていたユニフォームの手を止めて越前の方に向き直り、小さく笑ってわざとらしくユニフォームを全て脱ぐと、上半身裸のままで越前に近づいた。
越前は不二が直ぐ後ろに居る事に気づかず、そのまま着替え続け、先程の質問に対して返事がないので疑問詞を添えて恋人の名前をもう一度呼んだ。
だが、その呼び掛けは、まるで闇に吸い込まれるように部室内に反響する事なく溶けていってしまった。
不安になった越前は、不二と同じ格好のまま恋人の姿を確認しようと後ろを振り返える。
けれど、振り返る前に不二の両腕が越前を後ろからしっかりと抱き締めた。
部活後の火照った身体同士が、生身で触れ合う事になる。
越前よりも白めの不二の肌が、まるで天使の羽のように見えた。

「どうしてだと思う?リョーマ…」

見掛けとは裏腹な一面を持つ不二は、何時も越前をからかって苛め、それに耐えられなくなったところを抱くのが、ほぼ習慣となっていた。
今のこの状況も、それは例外ではないのである。
それでも、越前は不二を嫌いにはなれずにいた。
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