短編
□僕に勝てない俺のある日
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今日もいつもの休日と変わらない風景がそこにあった。
不二の家に越前が遊びに来ているのだ。
恋人同士の不二と越前は淡いクリーム色の、柔らかそうなソファーに座って何か話をしている。
しかし、楽しい会話の間に先程から不二が小さな溜息を混ぜていた。
「はぁ…」
どこかを呆けたように見つめて、また小さな溜息を吐く不二。
そんな様子の不二に越前も小さな溜息を吐いて怪訝そうな表情を向ける。
「何さっきから溜息ばっか吐いてんの?」
その問い掛けに、不二は小さな声を漏らしてから小さく笑って越前の顔を見た。
「リョーマは知らないんだ」
小さくクスクスと笑う不二に、越前は更に表情を怪訝なものに変えて不二を見る。
「何を?」
気づかない内に越前は不機嫌そうな声になっていた。
その不機嫌そうな声に流石の不二も笑うのを止め、代わりに柔らかな笑みを向ける。
「溜息を吐くと幸せが逃げるらしいんだよね」
不二のその答えに、越前は表情を怪訝なものから無表情に変えて一瞬固まる。
そして無表情から呆れたというような表情にして不二を見る。
「…だったら、溜息吐かない方がいいんじゃないんスか?」
少しぶっきらぼうにして言う。表情は呆れ顔から、完全に冷めたものとなっていた。
不二はその言葉にまたクスクスと笑い、越前から一度視線を外して今度は優しげな眼差しで見つめる。
「リョーマは馬鹿だなぁ…」
それを聴くと越前はムッとしてソファーから立ち上がった。
不二は立ち上がった越前を目で追いかける。
「は?何で俺が馬鹿なんスか!アンタの方がよっぽど馬鹿じゃん!!」
不二の訳の解らない言葉に思わずムキになって言い返す。