戴きものvVvV
□勝者が背負うモノ
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「不二先輩、大石先輩が呼んでるッスよ」
越前リョーマは、部活の最中だというのに木陰で涼んでいる不二周助に呼びかけた。
「あぁ、今行くよ」
不二は腰を上げ、部室に向かって歩き出す。リョーマもその後ろを付いて行った。
「それにしても不二先輩、もうすぐ全国大会なのに部活サボっていいンスか?それとも全国大会も余裕とか」
リョーマはからかい半分で不二に言った。すると、彼の足はピタリと止まってしまった。
「それはないね。全国大会は強豪達が沢山いるから」
「ふ〜ん・・・強豪って言ったって一応、王者立海には勝ったんだから。あとはどうだか・・・」
「越前」
その声はいつもの優しい声とは違い、どこか重さが感じられた。表情も、いつもと変わらないように見えて、緊張感が漂っていた。
「君は入学してすぐレギュラーになって、デビュー戦からずっと無敗だから分からないかも知れない」
しばらく間をおいて、不二は再び口を開いた。
「負けた時の悔しさ・・・君は想像できるかい?」
そう言われて、リョーマは何も答えなかった。
元テニスプレイヤーである父親には何度も負けたが、それとこれとは多分違う。
実際大会で負けたことがないので、不二の問いかけに答えることが出来なかった。
「僕は何回か負けたことがあるけど・・・あれは相当悔しいよ。なかなか言葉に出来ないくらい」
そう言った不二は、部員達が打ち合っているコートへと目をやる。
皆、汗水流して一生懸命ボールを追っている。